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No.1199 日本は「まことに小さな国」か?


「まことに小さな国」という歪んだ自己認識を改めて、自由を求める諸国との連帯に立ち上がるべき時。

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■1.「日本の皆さん、自由を持つている皆さんがどれくらい幸せなのかをわかってほしい」

 香港の民主化運動リーダーの1人アグネス・チョウ(周庭)さんは、香港国家安全維持法違反で10か月の実刑を言い渡されました。アグネスさんは、同法が成立する直前、ツイッターでこう語っていました。

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香港で自由や民主主義のために戦う人たちは、自由や命を失うことも考えないといけないということが、本当に悲しい。私も、たくさんの夢を持っているのに、こんな不自由で不公平な社会で生き、夢を語る資格すらないのか。これからの私は、どうなるのか...

いつかまた日本に行きたいなぁ。
- Agnes Chow 周庭 (@chowtingagnes) June 27, 2020
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 翌日の発信はこうでした。

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今日の香港での報道によると、香港版国家安全法は火曜日(30日)に可決される可能性が高い、そして「国家分裂罪」と「政権転覆罪」の最高刑罰は無期懲役という。日本の皆さん、自由を持つている皆さんがどれくらい幸せなのかをわかってほしい。本当にわかってほしい…
- Agnes Chow 周庭 (@chowtingagnes) June 28, 2020
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 24歳の女性が自由と民主主義を求めるデモをしただけで、10か月も投獄される。「たくさんの夢を持っているのに」それらの夢が押しつぶされようとしています。「日本の皆さん、自由を持つている皆さんがどれくらい幸せなのかをわかってほしい」という叫びが、我々の胸に突き刺さります。

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■2.「まことに小さな国が開花期を迎えようとしていた」

 しかし、こういう香港人を救おうと考える日本人は少ないでしょう。そういう事はアメリカのような大国がやるべきで、日本は小国として、せいぜいアメリカの後についていくだけだ、という自己認識が一般的だと思います。

 そんな小国意識をこの正月に、いやというほど見せつけられました。NHKがテレビシリーズ化した司馬遼太郎の『坂の上の雲』をオンデマンドで見たのですが、各回の冒頭、「まことに小さな国が開花期を迎えようとしていた」というナレーションが流れるのです。これは歴史歪曲ではないか、と毎回、ひっかかりを覚えました。

 司馬遼太郎が『坂の上の雲』などの小説で明治の先人たちの生き様をいきいきと描いたのは、それまでの自虐的歴史観を修正したという点では大きな功績ですが、このメッセージには、さらに深い自虐的な自画像が込められているのです。

 このナレーションを当然と受けとめるは、日本を「世界の片隅の小さな変わった国」と思っているのではないでしょうか? そして、そう思い込んでいる限り、アグネスさんには同情しつつも、日本は何もできない、と思い込んでしまうでしょう。

 アメリカ国内が大統領選で真っ二つになり、次の大統領は中国との裏のつながりが噂されているバイデン。日本は主体的に自由を求める諸国と連帯しながらやっていかなければなりません。そんな時に、この小国意識は大きな障害となります。


■3.鎖国をといてわずか50年で「世界一流の海軍国」

 そもそも幕末の時点で、日本は本当に「まことに小さな国」だったのでしょうか? 人口で見てみれば、幕末時点で日本は3200万人。黒船艦隊を送ってきた当時のアメリカは2350万人で、日本はその1.4倍です。イギリスに至っては1800万人で、日本は1.8倍。

「人口が多くても、鎖国が続いて世界の進歩から取りのこされた国だった」という歴史認識もありますが、技術力の差の実態は、黒船来航の10年後の薩英戦争で見ることができます。イギリス艦隊が生麦事件の賠償金を払え、と薩摩藩に押し寄せた時の戦いです。

 イギリス艦隊は鹿児島湾に入り、戦艦7隻が最新鋭のアームストロング砲で城下を砲撃しました。薩摩側は旧式の大砲ですが、鹿児島湾内の10カ所の洋式台場から92門の砲で反撃しました。

 その結果、死傷者では英国側60余名、しかも旗艦の艦長、副長も戦死。1隻は自力航行できないほどの損傷を受け、友艦に曳航されて引き上げました。薩摩藩の犠牲者は戦闘員10名、市民9名ですから、犠牲者数から見れば薩摩藩の勝ちです。これが白人と黄色人種が最初に戦った近代戦です。[JOG(1099)]

 薩摩藩は名君・島津斉彬公以来、西洋技術の導入を積極的に推し進め、製鉄溶鉱炉を持ち、大砲や砲弾の製造も行っていました。こういう技術的蓄積が基盤となって、わずか半世紀後には日本海海戦でロシアのバルチック艦隊をほぼ全滅させるという偉業を成し遂げる事ができたのです。アメリカの新聞「ニューヨーク・サン」は次のように社説で述べています。

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 日本艦隊がロシア艦隊を潰滅したことは、海軍史のみならず世界史上例のない大偉業である。日本が鎖国をといたのはわずか50年前であり、海軍らしい海軍を持ってから10年にもたたぬのに、早くも世界一流の海軍国になった。[c]
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 幕末時点では確かに世界の最先進国のイギリスには技術的に遅れをとっていましたが、戦争で完敗するほどの差ではありませんでした。その遅れも50年ほどで取り戻して、我が国は「世界一流の海軍国」にのし上がったのです。


■4.ヨーロッパを凌駕していた教育

 国力の基盤となる教育面ではどうでしょうか? 幕末に日本にやってきたプロイセン海軍のラインホルト・ヴェルナー艦長は、こう述べています。[JOG(997)]

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 日本では、召使い女がたがいに親しい友達に手紙を書くために、余暇を利用し、ボロをまとった肉体労働者でも、読み書きができることでわれわれを驚かす。民衆教育についてわれわれが観察したところによれば、読み書きが全然できない文盲は、全体の1%にすぎない。世界の他のどこの国が、自国についてこのようなことを主張できようか?
(ラインホルト・ヴェルナー『エルベ号艦長幕末記』)
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 教育の普及では欧米をはるかに凌駕する水準でした。このダントツの教育水準が、50年で「世界一流の海軍国」にのし上がる基盤となったのです。

 こうした教育面を見ても、世界の片隅の「まことに小さな変わった国」という自己認識は史実に違(たが)う、歪んだものです。いや「変わった国」というのは、良い意味で正しいかも知れません。なにせ19世紀中葉で、召使い女やボロをまとった肉体労働者が読み書きしている国など、世界にありませんでしたから。

 その後、経済発展を遂げた現代日本は、近年の停滞にもかかわらず国民総生産では世界第3位。軍事力5位。ノーベル賞受賞者数(21世紀、自然科学部門)2位という押しも押されぬ大国なのです。


■5.中国から世界を護る日本の責務

 そんな大国日本が直面すべき課題が、中国共産党の全体主義です。中国は近年、世界の覇権を握ろうという野望を隠さなくなっており、多くの発展途上国を「一帯一路」のプロジェクトに誘い込んで借金漬けにし、近隣諸国には軍事的圧力を加え、国内のチベット、ウイグルでは非人道的な弾圧を加えています。

 そのなかで、チェコのビストルチル上院議長が中国の怒りを承知で台湾を訪問したり[JOG(1183)]、オーストラリアのモリソン首相が新型コロナウイルスの調査を主張して、中国が同国からの牛肉輸入を停止したりしています。両国とも我が国よりもはるかに小さな国でありながら、中国を恐れずに筋を通している姿には感銘を受けます。

 日本の数分の1の大きさの国々がこれだけ真剣に奮闘しているのですから、日本は国力からいっても、中国共産党の全体主義から世界を守る、という課題に対して、リーダーシップをとる責務があります。しかし、「まことに小さな国」という歪んだ自己認識では、そういう気概は出てこないのです。


■6.フランケンシュタインを育ててしまった日本

 日本には中国から世界を護るべき特別の責務があります。中国を最初に国際社会に引き入れたのは、アメリカのニクソン大統領ですが、氏はかつて、世界を中国共産党に開くことで「フランケンシュタイン」を作り出してしまったのではないかと懸念している、と述べました。

 実は、このフランケンシュタインを育てたのには、アメリカ以上に日本に責任があるのです。1934年頃、中国共産党は蒋介石率いる国民党軍に敗れ、10万の兵力が数千人まで減って、滅亡寸前に追い込まれていました。それを助けたのが、日本軍と国民党軍を戦わせる、というソ連の戦略です。

 元朝日新聞記者でソ連のスパイだった尾崎秀實(ほつみ)が、日本国民に対中強攻策を煽って、泥沼の支那事変から抜け出せないようにしました。この時、せめて国民党軍と休戦していれば、蒋介石は中国共産党を滅ぼしていたでしょう。その蒋介石と日本は戦って、幼児だったフランケンシュタインを救ってしまったのです。[JOG(162)]

 その後、フランケンシュタインは蒋介石を追い出し、中国大陸を占拠しましたが、ニクソンが訪中すると、日中も負けじと国交回復を急ぎ、戦争中の「中国侵略」のおわびという意味合いで、総額3兆6千億円以上の経済援助をしました。[JOG(146)]

 日本国民一人あたり3万円ほどもつぎ込んで、経済発展を助けたのです。これで少年だったフランケンシュタインが青年に育ちました。

 さらにフランケンシュタインが残虐な本性を発揮して、天安門で数万人といわれる若者たちを虐殺し、世界から孤立していた時に、またしても中国共産党が目をつけたのが、日本でした。[JOG(162)]

 当時の日本は日中友好という甘言で、中国が経済発展すれば民主的になるだろうという甘い期待をマスコミや経済界が振りまき、対中投資などを再開しました。これでフランケンシュタインは完全に立ち直ってしまったのです。

 蒋介石軍との戦争、戦後の膨大な経済援助、天安門事件後の対中投資再開と、日本は3度も過ちを重ねました。日本の過ちがなければ、中国共産党は滅亡するか、少なくとも今日ほど強大にはなっていなかったでしょう。現在の国際社会にとってフランケンシュタインが手に負えないほどの怪物に育ててしまった最大の責任は日本にあります。その反省を我々はしなければなりません。


■7.結束こそ対中抑止成功のカギ

 怪物の押さえ込みの最大のポイントは、国内外の連帯です。トランプ政権で対中抑止の先頭に立っていたアメリカは、今回の大統領選の混乱で、国が真っ二つに割れています。欧州諸国は難民問題で、共同体としてのまとまりが崩れつつあります。中国にとっては笑いが止まらない状況でしょう。

 しかし、実は内部対立は中国共産党内でも同じで、習近平が汚職退治で多くの政敵を打倒する一方、対抗勢力も一帯一路プロジェクトの失敗、香港の強攻策で世界を敵に回した失政などで、習近平を突き上げているようです。

 100の力を持つ大国でも、60対40に仲間割れしていれば、出せる力はその差の20に過ぎません。30の力を持つ国でも勝つことができるのです。この点で、日本を含む自由主義諸国がいかに連帯するか、また日本国内でも中国の危険性について世論が結束する事が必要なのです。


■8.各国との連帯のための「和」の理想

 この連帯に関して、我が国は「和の国」としての伝統的理想で道を示すことができます。この理想を深めることによって、国内世論を結束させ、また諸国との連帯を強めることができるのです。

「和」の理想を大学生などに語ると、自分を殺して仲良くすること、というイメージを持っていて、それでは個性が圧殺される、自由にものが言えなくなる、などという反論が出てきます。

 しかし、これは「和」の理想を曲解した考えです。ラグビーで考えて見ましょう。スクラムを組む屈強なフォワード、全体の状況を瞬時に判断する司令塔、ボールを持って俊足でゴールを狙う選手等々、多様な個性と能力のある選手が連帯して、一つの戦略を目指すところにチームの強さが生まれます。

 チームの戦略は皆でよく議論して、それぞれが納得していなければなりません。試合が始まったら、その時々の状況で、各人がそれぞれの持ち場で自分が何をすべきなのか、自分で判断して行動する主体性が求められます。中央からの指令に従ってロボットのように動くのでは、瞬時に変化する状況には対応できません。

「和」の理想も同じことで、弊誌なりにまとめれば、「多様な個性と能力を持った国民一人ひとりがそれぞれの処を得て、自由・平等・主体的に連帯して共同体を支えていく」という生き方を理想としています。このような理想が、神武天皇の建国宣言、聖徳太子の17条憲法、さらには明治天皇の五カ条のご誓文などで、徐々に深められてきました。

 この理想は西洋の自由、人権、平等、民主という理想にも深い処で繋がっています。これらは人類共通の理想であって、西洋世界も我が国も、それぞれの歴史を通じてて深めてきたものです。世界の国々はそれぞれ独自の「根っこ」を持っていますが、深い処では繋がっているのです。

 人類が共有しているこれらの理想を踏みにじり、特権階級が富と権力を独占して自国民を搾取し、周辺民族を弾圧しているのが、中国共産党なのです。彼らから世界を守り、「いつかまた日本に行きたいなぁ」と願うアグネスさんが、我が国の青年たちと自由に夢を語り合う、そんな世界を目指す責務が我々にはあるのです。
(文責 伊勢雅臣)


■おたより

■日本は「自由」もタダだと思っている(Kimioさん)

 トランプさんが大統領の地位を諦めなければならない現実に、小生はハラハラしています。ナゼナラ、トランプさんの対中政策は、日本の安全保障に大きくかかわっているからです。

 ところが日本のマスゴミは、 日本の安全保障を維持するためには、「どういう対中態度」をとるべきかに関してまともな報道しようとはしません。

 ヒョットしたら「水と空気と安全、日本人はタダだと思っている」との名言を故山本七平さんは残しましたが、そんなMentalityを記者が持っているかもしれませんね。それにしても、周庭さんが置かれた状況を考察しますと、その三つの上に「自由」も加えるべきと思えます。


■伊勢雅臣より

 日本は「自由」もタダだと思っている、とは名言です。「日本の皆さん、自由を持つている皆さんがどれくらい幸せなのかをわかってほしい」という周庭さんの悲痛な叫びと通じています。

 古来から、美しい環境と、比較的安心のできる共同体に護られた日本人の「甘え」が感じられます。

■リンク■

・JOG(1196) 地政学で対中戦略を考える ~ 北野幸伯『日本の地政学』を読む
 地政学的に見れば、21世紀初頭の日中関係は20世紀初頭の英独関係にそっくり。台頭するドイツを英国はいかに抑えたのか?
http://blog.jog-net.jp/202012/article_3.html

・JOG(1183) なぜ中国はかくも傲慢なのか?
 そして、なぜこの国は「中国は一つ」「日中友好2千年」などと、虚妄のスローガンを叫び続けなければならないのか?
http://blog.jog-net.jp/202009/article_3.html

・JOG(1099) 薩英戦争 ~ 大英帝国を驚かせた和魂洋才
 軍艦7隻も送れば、薩摩藩も恐れをなして、すぐに生麦事件の賠償金を支払うだろうと、イギリス側は高をくくっていたが、、
http://blog.jog-net.jp/201902/article_1.html

・JOG(263) 尾崎秀實 ~ 日中和平を妨げたソ連の魔手
 日本と蒋介石政権が日中戦争で共倒れになれば、ソ・中・日の「赤い東亜共同体」が実現する!
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h14/jog263.html

・JOG(236) 日本海海戦
 世界海戦史上にのこる大勝利は、明治日本の近代化努力の到達点だった。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h14/jog236.html

・JOG(162) 天安門の地獄絵
 天安門広場に集まって自由と民主化を要求する100万の群衆に人民解放軍が襲いかかった。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h12/jog162.html

・JOG(146) 対中ODAの7不思議
 軍事力増強に使われ、民間ビジネスに転用され、それでいてまったく感謝されない不思議なODA
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h12/jog146.html

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