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No.1266 風評加害者たちの独善


 事実を無視した原発被害報道によって、地元民を風評被害で苦しめている人々の独善ぶり。

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■1.風評加害者が起こした風評被害

『「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か』の著者・林智裕さんは、福島県に住む友人の身の上に起こった、こんな悲劇を紹介しています。

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 私の友人は当時、生まれたばかりの子供との生き別れを余儀なくされた。首都圏出身の彼の妻は、こうした「福島に留まってはいけない」という誤った情報を信じ、母子だけで実家へと自主避難した。
その後、福島に戻って一緒に暮らそうと提案に訪れた彼を、妻とその家族は「人殺し」呼ばわりと共に追い返した。友人夫妻は結局離婚し、まだ物心つかない赤ん坊の家庭は壊されてしまったのだ。[林、285]
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「福島に留まってはいけない」という「誤った情報」の発信の一つが、『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)の連載『美味しんぼ』でしょう。福島第一原発を訪れた主人公一行が原因不明の鼻血を出したという描写がありました。この描写が科学的事実に基づかないものであることを、林さんは次のように指摘しています。

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 そもそも放射線被曝そのものを原因とした出血の場合、3シーベルト(3000ミリシーベルト)程度という桁違いの被曝線量が必要であり、鼻以外の粘膜からも出血して止まらず、ほどなく絶命する可能性が非常に高い。しかし、雁屋の漫画が発表されて以降、現在に至るまで、鼻血被害を訴えた人が被曝影響で死亡した事実はない。
公表されているデータからは、当時、鼻血を主訴とした医療機関受診数の有意な増加は見られていない。[林、1002]
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 被爆による出血に必要な3000ミリシーベルトに対して、避難が解除された地域では、年間でも5ミリシーベルトにも達していません。[林、2167] 鼻血どころか、被爆による健康被害そのものが出ていないことが明らかにされています。

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福島では被曝そのものでの健康被害が出ていないことが、国連科学委員会(UNSCEAR)の2013年報告書の時点ですでに明らかにされていた。しかし、あれほど福島を気遣い、「心配」するあまりに数々の不安を振りまいてきたはずの言論人の多くがこの〝朗報〟を黙殺、メディアも報告書をまともには取り扱わなかった。[林、1,019]
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 こういう科学的なニュースを黙殺しておいて、「放射能で鼻血が出た」などという作為的なシーンを描くのです。こうしたメディアこそ、独善的な「風評加害者」たちです。


■2.山本太郎・令和新選組代表の独善的な風評加害

 文科省は学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安として「放射線量年間20ミリシーベルト」と設定していますが、これについての山本太郎・令和新選組代表が、2011年にこう噛みついています。

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 福島の子供達が、これから先、病気になるのはわかりきっている。まるで死刑台に向かって列を作らされているようです。[林、1,599]
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 前述の国連科学委員会の報告と対比すれば、これが非科学的な暴言であることがよく判ります。山本太郎代表は2013年の参議院議員選挙の際にも、NHKのインタビューでこう語っています。

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何よりも一番やって欲しいということは、食品の安全基準。これを変えることですよね。今、1キログラム当たり100ベクレルは、放射性廃棄物と同等なんです(中略)それを国民に食べさせて安全とする政府なんて、話にならないんですよね。[林、1,713]
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 一般食品中の規制値は、EUが1250ベクレル、アメリカが1200、韓国が370。したがって日本の100ベクレルとは世界的に見ても突出して厳しい数字です。100ベクレルを許容する「政府なんて話にならない」というなら、どこの国の政府が話になるのでしょうか?

 ちなみに、100ベクレルの飲食物を1kg食べた時の被曝量は、0.0013ミリシーベルトで、放射線量年間20ミリシーベルトの1万5千分の1以下です[東電]。すなわち、こういう食べ物を毎日42キロ、1年間食べ続けなれば、「放射線量年間20ミリシーベルト」に届きません。鯨や象ならいざしらず、人間には不可能な食事量です。

 山本太郎代表は、こういう非科学的・扇動的な政府批判を振り回しながら、それが子供たちの間で「大人になる前にがんになる」「将来子供が産めない」「放射能が伝染(うつ)る」などという「風評被害」を生んでいることは、気にしていないようです。氏の政治家としての志は、国民のためではない事を表しています。


■3.「フクシマの処理済み汚染水を海へ」

 一部のメディアも風評加害をまき散らしています。

 たとえば、放射能物質を含んだ「汚染水」をALPS(多核種除去設備)などを用いてトリチウム以外の放射性物質を規制基準値以下まで取り除いたものを「ALPS処理水」といいます。その処理水が貯まりに貯まって、巨大なタンクが千基以上も並び、6年以上にわたって有識者の検討、国際機関からの評価、関係者への説明を行い、昨年ようやく菅政権によって海洋放出の方針が決まりました。

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 しかし、この「ALPS処理水」を、毎日新聞は「汚染処理水」、朝日新聞は「処理済み汚染水」と表記して、さも汚染され有害な水をそのまま海洋投棄するという印象を振りまいています。2021年4月10日付朝日新聞コラム「素粒子」では、こう訴えています。

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 フクシマの処理済み汚染水を海へ。「どの原発でもやっている」と言われても。放出量が桁違いに多いし、そもそも他はメルトダウンしてないし。[林、1,278]
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 林さんは、この「放出量が桁違いに多い」は、「フェイクニュース」の域だとして、世界の原子力発電所からのトリチウム排出量をデータで示しています。それによると、福島第一原発でからの放出計画は年間22兆ベクレルですが:

・フランス、ラ・アーク再処理施設 約1京3700兆ベクレル(福島の600倍以上)
・イギリス、セラフィールド再処理施設 約1540兆ベクレル(70倍)
・カナダ、ブルーズA,B原発 892兆ベクレル(40倍)
・中国、大亜湾原発 42兆ベクレル(1.9倍)
・韓国、古里原発 36兆ベクレル(1.6倍)

 放出量は「桁違いに少ない」のです。中国や韓国は自国の放出量の方が多いのに、そちらは頬被りして、日本を批判するのです。しかし、それよりも問題なのは国内の風評加害者たちでしょう。

 そもそも、トリチウムは自然環境の中でも宇宙線と大気の反応によって生成され、海や河川のみならず、飲料水や体内の水分にも含まれているため、完全に分離するのは困難です。その影響も他の放射性物質に比べて格段に低いために、世界中の原子力施設で日常的に海洋放出されているのです。

 こういう事実には頬被りして、福島を「フクシマ」と呼び、「処理水」を「汚染水」と言い換え、データも無視して「桁違いに多い」とする。こういう「フェイクニュース」を平気で流すのは、もはや中立公正な報道機関というより、政府の足を引っ張るためのプロパガンダ機関でしょう。


■4.「『きれいな海を残したいだけなんだ』漁師の憤り」

 2021年9月17日には毎日新聞が「『きれいな海を残したいだけなんだ』処理水の放出方針、漁師の憤り」という記事をウェブ配信しました。この記事には、地元漁師の次のような言葉が引用されていました。

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 なんぼ希釈したって同じだべ。慌てて放出しなくてもいいべ。魚の餌になるプランクトンは安全なのか。それならデータを示してほしいが、それもない」
「おれは、きれいな海を残したいだけなんだ」[林、1,840]
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 林さんが調べると、この漁師は福島第一原発からは60キロ以上も離れている、宮城県との県境にある新地町の人物でした。関東地方で言えば、東京の晴海埠頭の環境問題に関して、鎌倉市に住む人間を「地元の声」として紹介するようなものです。

 しかも、この人物は「不自然なほど多くのメディアから何度も取り上げられており、『地元漁師代表』のように扱われる『常連』」[林、1,853]とのことです。

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海洋放出の決定に対する地元の声を集めたいのであれば、処理水タンクが立地する双葉町と大熊町の首長の声は欠かせないはずであり、彼らは処理水のタンクの継続保管に明確に反対している。
首長は民主主義に基づく選挙で選ばれた町の代表者だ。その訴えは、町の民意を代表する声として一漁師の声以上に、本来重いものである。[林、1,858]
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 こういう「地元漁師」を何度も登場させるのは、単に自分たちの言いたいことを代弁させているだけなのです。


■5.県民が恐れているのは「健康被害」ではなく「風評被害」

 処理水の海洋放出に関する県民の声を聴きたいのなら、県内を対象とした世論調査に基づくべきでしょう。県民全体では「賛成」が40.4%、「反対」が44.2%、「わからない・無回答」が15.4%と、反対がやや上回っています。

 しかし、40代では46.0%と「賛成」が多く、この傾向は30代で49.6%、29歳以下では49.9%と増加しています。若年層を中心にトリチウムの科学的知識が正しく理解され、大きく意見が変わってきています。

 しかし50代以上の反対も、そもそもの理由が風評被害なのです。2021年5月に福島民報・福島テレビが福島県民を対象に行った調査によれば、処理水の海洋放出による懸念として、「新たな風評の発生」が40.9%で最も多く、「県民への偏見・差別」が18.1%、「県内産業の衰退」が12.1%と、7割ほどを占めています。その一方で、「健康被害」を懸念するのは11.0%に過ぎません。

 県民が恐れているのは「健康被害」よりも、「風評被害」なのです。そして、その「風評被害」を作り出しているのが、朝日新聞や毎日新聞に代表されるプロパガンダ機関なのです。


■6.「事実に基づかない偏見差別、非難中傷は、人としてもっと怖く悲しい」

 朝日新聞の三浦英之記者は、自身のツイッターで「僕は常々"福島"は将来必ず"水俣"になる」と言い続けている」と、発信しました。このように福島と水俣を関連付けようとする言説に、宮本勝彬(かつあき)水俣市長は次のように訴えていました。

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 特に懸念しておりますのが、風評被害からの偏見や差別の問題です。水俣病の被害は命や健康を奪われることに止まらず、被害者を含め市民すべてが偏見や差別を受け、物が売れない、人が来ないなどの影響を受けたり、就職を断られる、婚約が解消されるなどの影響を受けたこともあります。言いようのない辛さであります…
放射線は確かに怖いものです。しかし、事実に基づかない偏見差別、非難中傷は、人としてもっと怖く悲しい行動です。[林、1364]
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 長年、風評被害を受けてきた水俣からの「事実に基づかない偏見差別、非難中傷は、人としてもっと怖く悲しい」という悲痛な叫びです。


■7.風評加害者たちへの炎上制裁を

 こういう風評加害者たちをいかになくしていくか、その良い事例が最近、生まれました。2022年1月、菅直人、小泉純一郎、鳩山由紀夫、細川護熙、村山富市ら5人の元首相が欧州委員会委員長にむけて、欧州のエネルギー政策を脱原発にかじを切るよう呼びかける書簡を送りました。

 その中では福島での原発事故を挙げて「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ、この過ちを欧州の皆さんに繰り返してほしくない」と書かれていました。しかし、福島県の県民健康調査検討委員会や国連科学委員会などにより、原発事故の健康への直接的影響は否定されています。

 この手紙に対しては、山口荘環境相、高市早苗自民党政調会長、岸田文雄総理大臣、さらには日本維新の会、国民民主党からも抗議が寄せられました。5人の元首相への批判の声はツイッターの炎上などで爆発的に広まり、それによって「福島では被曝によって甲状腺がんが増えたわけではない」という正確な情報がかつてない勢いで共有されました。

 今までは行政が風評加害と戦わずに逃げ続け、被害者は見捨てられてきました。それが、きちんと戦うことによって、かえって正確な認識が国民の間にも広まり、風評が広がる余地を狭めることができたのです。

 風評加害者たちが、好き勝手に風評を煽っていたのは、どこからもお咎めがなかったからです。選挙目当て、政権攻撃、思想誘導のために、事実に基づかない風評を広めて被害者を作ることは、それを禁ずる法律がないからと言って、許される行為ではありません。法律の基盤には社会的道徳があるのです。

 国会議員やメディアなどは、一般人にはない権力を握っています。その権力を独善的に使い、被害者を生むことは、民主主義を破壊する行為です。

 ツイッターなどでの「正しい炎上」は、それに対する抑止だと考えれば、それは権力者から一般国民を護る民主的抵抗の戦いなのです。それによって、多くの国民が事実を正確に知って、風評が広まる土壌を減らしていく。それは、より成熟した自由民主主義の基盤を築くことにつながります。
(文責 伊勢雅臣)

■おたより

■「最近の若者は新聞さえ読まない…」のが良い(Naokiさん)

今回の文章でとても興味深かったのは処理水の海洋放出に対する年代別の割合でした。若い人の方が概ね科学的知識を求め、冷静に判断していると思われたからです。

安易に年齢で区別はできないと思いますが、50代以上はTV・新聞世代です。何の疑いもなく「信じやすい」年代と言えるかもしれません。

私には中学生と高校生の子どもがいますが、2人とも接するメディアはYouTubeやインスタなどのSNSがメインです。

「最近の若者は新聞さえ読まない…」と嘆く風潮もありますが、プロパガンダに堕したメディアに触れる方がよほど害が大きいと思われます。

善人の仮面を被った悪人ほど質の悪い者はありません。

私も中学生の前に立つ教師として襟を正しつつ、何をどのように伝えていくべきか?考え続けていきます。

■伊勢雅臣より

 若い年代ほど、新聞を読まず、テレビを見ない。これはプロパガンダと化している現在のマスコミからの逃げ道ですね。その分、ネットで正しい情報を流さなければなりません。本誌も頑張りましょう。

 読者からのご意見をお待ちします。本号の内容に関係なくとも結構です。本誌への返信、ise.masaomi@gmail.comへのメール、あるいは以下のブログのコメント欄に記入ください。
http://blog.jog-net.jp/


■リンク■

・JOG(1206) ファクトフルネス ~ 偏向メディアに踊らされないために
 偏向情報は、人間の原始本能を衝いて、誤った方向に走らせる。
http://blog.jog-net.jp/202103/article_1.html

・JOG(1119) 吉田調書誤報事件~ 門田隆将『新聞という病』から
「朝日は、なぜ事実をねじ曲げてまで、日本を貶めたいのか」
http://blog.jog-net.jp/201906/article_4.html



■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。


・東京電力「ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)の換算例」
https://www.tepco.co.jp/life/custom/faq/faq_02s_01-j.html

・林智裕「『正しさ』の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か」★★★、徳間書店(Kindle版)、R04
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/B09VL8H2NB/japanontheg01-22/


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