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No.1263 歴史物語で生徒は育つ


 ある中学生は歴史の授業を受けて「ロシアのウクライナ侵攻は、日露戦争の時代に似ている」と気づいた。

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■1.「ロシアのウクライナ侵攻は、日露戦争の時代に似ている」

 ある男子中学生は、日露戦争の授業を受けて、こんな感想文を書きました。

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日露戦争で日本が勝利するまでには、数々の苦難があったということが改めて分かった。ロシアがウクライナに侵攻しようとしている現状と、この日露戦争の頃の時代はロシアの欲深さがあらわれていて似ていると思った。高校では、近代史についてより深く知りたいと思っている。
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 ロシアによるウクライナ侵攻は、100年以上前にロシアが満洲に侵攻し、朝鮮半島にまで手を伸ばして、日露戦争が始まった頃とそっくりなのです。歴史の授業で自らこういう発見をして、そこから、この生徒は、現在の日本がどう振る舞うべきか、自分で考えていくことができるでしょう。歴史から学ぶということの良い一例です。

 そして、こういう気づきを得れば、もっと近代史を学ぼう、という意欲も湧きます。「日露戦争は1904年に始まった」などと、単に暗記物に堕(だ)した今までの歴史教育とはまったく違う「深い学び」がここにはあります。

 こういう「深い学び」ができるような歴史教育をいかに実現するか、現代日本が抱える大きな課題の一つです。


■2.「深い学びをするには」

 この生徒の「深い学び」は、どのように得られたのでしょうか? その過程をJOG(1255)「歴史をYahoo!ニュースの見出しで伝える活き活き学習法」でご紹介しました。

 これは東京都のある区立中学で歴史を教えているT.I先生が、日露戦争について講義をした後で、生徒をグループ分けして、日露戦争の各局面を報道する14.5文字(句読点などは0.5文字)のYahoo!ニュースの見出しの形で考えさせる、という学習です。

 たとえば、あるグループは、こんな見出しを考えてくれました。

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「ロシア満州を占領、日英同盟で対抗」

 のちに、日英同盟は第一次世界大戦にも影響を及ぼす大切なものとなるから。日露戦争のきっかけとなったロシアの占領は国民全員が知るべきだから。
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 ロシアが満洲を占領したことは「国民全員が知るべき」国家的危機であり、また日英同盟はロシアの侵攻に備えたものであったという学びが示されています。こう捉えれば、ロシアがウクライナに侵攻し、NATOが全力でウクライナを後押ししている現在の構図とよく似ていることが判ります。

 Yahoo!ニュースという短いフレーズにまとめる過程で、ぎりぎりの歴史の本質に迫っていくことができます。こういう作業をチームで行っていくことで、「主体的・対話的で深い学び」という文部科学省の学習指導要領で示された目標が見事に達成されているのです。


■3.「主体的・対話的で深い学び」ができる教科書、できない教科書

 しかし、生徒たちがグループで見出しを考えていくためには、まず基本的な史実を学ばなければなりません。それを教えるのが歴史教科書の役割ですが、JOG(1238)「こんなに違う高校『歴史総合』教科書」で述べたように、現在7社から提供されている教科書では、「主体的・対話的で深い学び」ができない教科書がいくつもあります。たとえば、以下の二つのタイプの教科書です。

・思想誘導型: 生徒を左巻き思想に誘導しようと、作為的な偏向記述を含んだ教科書。たとえば「日露戦争は帝国主義国どうしの戦争であった」と何の説明も論証もなく、問答無用で結論を押しつけるような教科書です。これでは、生徒は押しつけられた結論を丸暗記することしかできません。独裁者に操られるロボットを作るための教育方法です。

・社会科学型: 先人の歩みを高いところから見下ろして、歴史の中の因果関係を記述した教科書。たとえば、「日露戦争後に日比谷公園での暴動が起こったのは、膨大な犠牲に対して、賠償金もとれなかったから」という「合理的」説明をしている教科書があります。こういう知識だけでは、生徒は頭でっかちになるだけで、自分から社会のために何かしようとは思わないでしょう。

 冒頭に紹介した生徒たちは、明成社の教科書で日露戦争の講義を受けました。ここには、日露戦争の日本の勝利に感激したインドの新聞が「日本の勝利がインド人を覚醒させ、イギリスと対等という前向きの思想に目覚めさせた」と報道した史実も紹介されています。こういう史実を学んで、ある生徒グループは次のような見出しを考えました。

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「日本勝利 亜諸国独立へ大きな一歩」

 日本の勝利は、アジアだけではないが(JOG注: 東欧などにも)、独立への希望を与えた。(JOG注: 日本の国際的)地位の向上と、日本の成果を示したいと思ったから。
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 こういう気づきは「歴史物語型」の記述から生まれます。

・歴史物語型: 先人がどのような状況の中で、どのように考え、どう行動して、どのような結果を得たのか、という物語を通して、歴史を学ぶ教科書。

 歴史物語の中での先人の声を聴くことから、生徒たちは自分で主体的に感じ、考え、それを持ち寄って、グループで対話的に学ぶことができるのです。それによる「深い学び」は、以上の見出しや説明によって窺えます。


■4.生徒が情意で受け止めてこそ「深い学び」となる

 歴史物語型の教科書を使って「主体的・対話的で深い学び」ができた実例を、生徒たちの感想文で直接窺うことができます。冒頭で紹介した感想はその一つですが、もう2編ほど、見てみましょう。

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 このようにみんなと意見を交換して考えていくのは自分の歴史に対する一方的な見方を止めて、たくさんの考え方が生まれるのでとてもおもしろかった。(女子)
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「たくさんの考えが生まれる」という点から、生徒それぞれが「主体的」に考えていることが窺えます。そのうえで「みんなと意見を交換して考えていく」という「対話的」な学びが、「自分の歴史に対する一方的な見方を止め」ることにつながった、というのです。

 また、この生徒は「とてもおもしろかった」とも述べています。「主体的・対話的で深い学び」は、自分自身で考えて物事を発見する喜びをもたらします。その喜びが原動力になって、さらなる探求に向かうでしょう。

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 僕は今回の歴史総合を通して昔の日本男児の魂や愛国心を強く感じました。昔の人の気持ちを忘れずに引き継いでいきたいです。(男子)
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「昔の日本男児の魂や愛国心を強く感じました」という点から、この生徒は先人の声によく聴き入っていることが窺えます。そういう先人たちの、我々子孫に独立国を遺そうという「愛国心」があったからこそ、現在の日本がロシアの属国とならずに済んでいるのです。

 先人への感謝という「情」から、「昔の人の気持ちを忘れずに引き継いでいきたい」という「意」が生まれます。単に「知」を増やすだけでなく、生徒の「情」と「意」を奮い起こす全人的な学びこそ「深い学び」なのです。


■5.教育基本法から学習指導要領へ

 この二人の感想からは、「主体的・対話的で深い学び」が、学習指導要領の次の目的を見事に果たしていることが分かります。

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「グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力」の育成
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 その下位目標の一つとして、以下があります。

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「日本国民としての自覚、我が国の歴史に対する愛情、他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚」
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 この二つの目標は、平成18年に改訂された教育基本法の前文の精神を、歴史学習の分野で具現したものです。

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個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
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 この前文には、占領下の昭和22年に制定された旧教育基本法から大きく変わった点が二つあります。「公共の精神を尊び」と「伝統を継承し」です。「公共の精神」とは国家共同体の中での横糸であり、「伝統の継承」は先人から受け継がれた縦糸です。子どもたちがこの縦糸、横糸によって生かされていることを自覚できるよう育てなければならない、という深い人間観が込められています。

 そして、「歴史物語」型の教育によってこそ、先人の声に聴き入って生徒たちは自分を支える縦糸・横糸に気がつくのです。その気づきから先人への感謝の気持ちを抱き、自分も自分なりに世のために何事かをなそうという志が芽生えます。このような歴史教育こそ、最高の道徳教育でもあるのです。


■6.教育正常化への道半ば

 教育基本法改正は第一次安倍政権のもとで山谷えり子総理大臣補佐官(教育再生担当、当時)を中心として、「戦後五大長時間審議」の一つと言われるほど長い審議を重ねて成立しました。その方針が今回の学習指導要領のなかで歴史学習の目的、目標、手段にまで落とし込まれたのは、まことに慶賀すべき事です。

 しかし、残念ながら、学習指導要領の目的・目標を無視した教科書がほとんどであることは、弊誌でも今まで見てきた通りです。すなわち教育基本法から学習指導要領へ、と続いてきた教育正常化の流れが、守旧的な歴史教科書という巨大ダムによって堰き止められているのです。

 このダムをなしているのは、自由社の中学歴史教科書を狙い撃ちにして「一発不合格」とした検定調査審議会(藤岡信勝『教科書検定崩壊!』)、そして意に沿わない教科書採択に不当な圧力をかける左巻き勢力であるようです。

 ここで大きな問題は、本来の主権を持つ国民の不在です。自分の子どもたちの教育を学校や教師に丸投げにしてしまい、その結果、ごく少数の左巻き勢力の暗躍によって、ほとんどの生徒たちに「思想誘導」型教育がなされているのです。子供たちが先人の声に耳を傾け、その志を受け継いで活き活きと生きる人間として育つ道が、ごく一部の左巻き勢力によって阻害されています。

 教育は国民一人ひとりが「我が事」として、主人公意識をもって取り組むべき課題であるとともに、すべての国民がそれぞれの場所でなんらかの貢献ができ、またそれが必要不可欠の分野です。そういう覚悟で、国民一人ひとりの責務として、教育正常化に取り組んでいきましょう。


■7.「歴史物語教材のgoogle」を目指して

 教科書とともに、もう一つ大事なのは副教材です。教科書の限られたスペースでは、歴史物語も十分語り尽くせません。その分を各教師が授業の中で、自ら補足して話していただかなければなりません。

 たとえば、日露戦争での開戦決定に関して、元老の伊藤博文がこう語っています。

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今度の戦に就(つ)いては、陸軍でも、海軍でも、大蔵でも、日本が確実に勝つという見込みを立てている者は一人もない・・・

しかし打捨てて置けば、ロシアはどしどし、満洲を占領し、朝鮮に侵入し、遂には我が国家までも脅迫するに至る。

事茲(ここ)に至れば、国を賭しても戦うの一途あるのみである。成功・不成功などは眼中にない。[渡辺幾治郎『明治天皇 下』]
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ITŌ_Hirobumi.jpg

 こういう悲壮な声を聴けば、いかに教科書が「日露戦争は帝国主義国どうしの戦争だった」などと押しつけても、生徒たちはそのまま受け入れることはないでしょう。「主体的・対話的で深い学び」によって、思想誘導には騙されない人間に育っていくのです。

 幸い、このインターネットの時代には、多くの志ある人々や各地区の教育委員会によって、歴史物語型の文章や動画が大量に発信されています。問題は、教育に適した副教材を、教師や生徒たちが検索できるように整理・体系化されていないことです。

 現在、この点を「歴史物語教材のgoogle」を構築することで、「歴史物語」型授業の基盤作りをしたいと考えています。もう少し構想が具体化しましたら、弊誌でもお知らせしますので、志ある方々のご支援ご協力をお願いできたら、幸いです。
(文責 伊勢雅臣)

■おたより

■「歴史を学ぶ」と「歴史から学ぶ」の違い(Naokiさん)

今回のメルマガを拝読して思ったのは、
「歴史を学ぶ」と「歴史から学ぶ」の違いについてです。

両者とも大事ではあるのですが、
学校教育ではともすると前者のみに陥りがちになります。

後者へ到達する授業をつくろうという意識がないと、
安易に「知識伝達」の授業になりがちです。

歴史を生きた先人の知恵を学び、現代に生かしてこそ
「歴史から学ぶ」と言えますし、そういった学び方の方が
生徒たちの意欲も引き出せると感じました。

「歴史から学ぶ」姿勢で育まれるのは「転用できる力」です。
過去の事例を現代に当てはめて考え、
相違点を見出したり突破口を探したりできる能力とも言えます。

「物語」形式の教科書や授業がこのような能力を育成します。
「史実+先人の想い」に「自分の想像力」を掛け合わせると
歴史が自分の中に甦ってくるからです。

伊勢様の「歴史物語教材のGoogle」構想にも強く共感しました。
その際はぜひ参画させていただきたいです。


■伊勢雅臣より

「歴史を学ぶ」と「歴史から学ぶ」の違いについて、貴重なご指摘ありがとうございました。

 たとえば、道徳なども抽象的な徳目から学ぶよりも、その道徳の実践をした先人の物語から学んだ方が、生徒も活き活きと学べるでしょう。戦前の「修身」は、このアプローチをとっていました。

 とかく歴史教科書を執筆している歴史研究者は「歴史を学ぶ」方に傾斜しがちですが、「歴史から学ぶ」、そのための歴史物語なのだ、という考えを堅持したいと思います。



■リンク■

・JOG(1255) 歴史をYahoo!ニュースの見出しで伝える活き活き学習法
 Yahoo!ニュースの見出しを考えるという課題で、生徒たちが活き活きと先人たちの歴史物語を学ぶ。
http://blog.jog-net.jp/202202/article_3.html

・JOG(1238) こんなに違う高校「歴史総合」教科書
 歴史教科書には「思想誘導」型、「社会科学」型、「歴史物語」型の3つがある。
http://blog.jog-net.jp/202110/article_3.html


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