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No.1175 共同体の人生観が教育を真っ当にする ~ Live講座2-2 「共同体で輝く日本の力」から


 戦後教育の迷走をもたらした「個性」「自己決定権」などの「空想」を打ち祓う共同体の人生観。

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■1.池江璃花子選手の心を打つスピーチ

 コロナ禍がなければ、昨日、東京オリンピックが開幕していたはずですが、それを惜しむように、一昨日、白血病から立ち直った競泳女子の池江璃花子(りかこ)選手が、国立競技場に元気な姿を見せ、心に響くスピーチをしてくれました。

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 私も、白血病という大きな病気をしたから、よく分かります。
 思っていた未来が、一夜にして、別世界のように変わる。それは、とてもきつい経験でした。
 そんな中でも、救いになったのはお医者さん、看護師さんなど、たくさんの医療従事者の方に、支えていただいたことです。身近で見ていていかに大変なお仕事をされているのか、実感しました。しかも今は、コロナという新たな敵とも戦っている。本当に感謝しかありません。ありがとうございます。
 2020年という特別な年を経験したことでスポーツが、決してアスリートだけでできるものではない、ということを学びました。さまざまな人の支えの上に、スポーツは存在する。本当に、そう思います。・・・
スポーツは、人に勇気や、絆をくれるものだと思います。私も闘病中、仲間のアスリートの頑張りにたくさんの力をもらいました。[産経]
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池江璃花子.jpeg
産経ニュース

「さまざまな人の支えの上に、スポーツは存在する」、同時に「スポーツは、人に勇気や、絆をくれるもの」。アスリートもこういう共同体の中でこそ、他者に支えられる感謝を抱き、他者のために頑張ろうというファイトが生まれるのでしょう。

 池江選手が平成30(2018)年7月のジャカルタ・アジア大会で6冠を達成し、金メダル数でアジア女子の一大会最多獲得記録を塗り替えたパワーも、こういう深い姿勢から出ている、と思いました。

 人としての生きがいも幸福も共同体の中にある、そういう人生観が欠落していることが戦後教育の欠陥、というのが、昨日のLive講座2-2「共同体で輝く日本の力」で訴えたかったことでした。


■2.「他人の自由を侵害しない限り何をやっても良い」のか?

 共同体の視点を欠いた欠陥教育の典型が、平成12(2000)年に厚生労働省の外郭団体が130万部も製作して、中学生向けに無料配布しようとした『思春期のためのラブ&ボディBOOK』です。その中には「交際するか、しないか」「子どもをつくるか、つくらないか」「産むか、産まないか」を「決めるのはすべて自分」というページまでありました。

 これは「自己決定権」という主張に立っており、160年も前の英国の哲学者ジョン・スチュワート・ミルが著書『自由論』で述べた考えです。ミルは厳格な父親によって、同年代の子供たちと遊べずに勉強ばかりさせられ、10歳にしてラテン語、ギリシャ語の書物を読むという、異常な環境の中で育ちました。

 成人してからは、人妻であったハリエット・テイラーの愛人となり、その夫や子供たちと共棲する一妻二夫関係の異常な家族を築きました。ミルの非常識に対する英国社会のごうごうたる非難に反論するために持ち出したのが、「他人の自由を侵害しない限り何をやっても良い」という自己決定の概念でした。

 これが空想である事は、21世紀の科学的知見から明らかです。人間の脳にはミラー・ニューロン(鏡の神経細胞)があり、それによって、他者の行動が鏡に映るように、自分も同じ感情を抱きます。たとえば、電車の中でお年寄りに席を譲る若者の光景を見れば、ただ見ているだけの自分も爽やかな思いをします。

 ミラー・ニューロンの働きによって、クラスの中で、一人でもクラス全体のためにと頑張る生徒がいると、自分も一緒にやろう、という気持ちが広がります。逆に一人でもふしだらな行動をとる生徒がいれば、それも伝染します。「人に迷惑さえかけなければ何をしても良い」とは誤りで、一人の悪行は社会に精神的・道徳的な迷惑をかけるのです。

 160年も前の非常識な哲学者の言い分をもとに「自己決定権」などという空想を振りまく人々のために、戦後教育は迷走を続けてきたのです。もっと事実をしっかり観て、科学的な教育思想を打ち立てねばなりません。


■3.「社会制度が人間の天性を抑圧している」

 同様の戦後教育の「空想」の一つに、「詰め込み教育はよくない」「子どもの個性を伸ばすべきだ」という主張があります。これは「近代教育の祖」と呼ばれるジャン・ジャック・ルソーの思想を下敷きにしています。ルソーは「教育学の古典」と呼ばれる著書『エミール』の中で、こんな事を述べています。

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 偏見、権威、必然、前例ーこれらの中にわたしたちは産み落とされた。これらいっさいの社会制度が、人間の天性を抑圧している。[Rousseau, Emile]
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 ルソーは誕生時に母を亡くし、父親には十歳の時に棄てられ、盗みや詐欺の常習犯。文明社会の法秩序、道徳などへの憎悪を「哲学」にしました。

 五人の子供を作りましたが、この「哲学」を実証すべく、みな生まれるとすぐに孤児院に送ってしまいました。「子供たちに最良の行先を選んだ。私が彼らのように育てられていたら、喜んだであろう」などと言っています[Rousseau, Confessions]。

 教育勅語が基づく人間成長のモデルでは、子どもはまず「父母に孝に」と家庭生活の中での思いやりを学びます。そこでの孝行とは、まずは親を安心させることです。収入もないのに、高い贈り物をしたら、親は「盗みでもしたのか」と不安に思うでしょう。それは真の親孝行ではありません。

 真の親孝行をしようと思ったら、親の気持ちを思いやる姿勢が必要です。ルソーが子どものころ、盗みや詐欺の常習犯だったのは、被害にあった人への同情がなかったからでしょう。自分の子どもをみな孤児院に送ってしまって、「自分なら喜んだであろう」などと非常識なことを言えるのも、共感の情が欠けていたからでしょう。

 これもルソーの天性、個性でしょうが、真の天性、個性はこんな安っぽいものではありません。まず他者への豊かな共感を持ち、他者のために自分も何事かをしたいと考え、そこから自分の好きな分野、得意な領域で勉強したり、技術を磨いたりして、「処を得る」、そういう人間的な成長の過程で、自ずから真の天性、個性が輝きだしていくものです。


■4.日本でもブラジルでもどうして「勤勉・努力・真面目」な人間を生み出しているのか

 事前に、講義に期待する内容として、ブラジルの方から、次のようなご要望をいただきました。

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 ブラジルでは日本人のことを「勤勉・努力・真面目」と言う言葉であらされることが多いのですが、それは本国日本でもまったく当てはまると訪日(帰国)する度に思います。
 教育制度も生活習慣も日本とブラジルではまるで違うのですが、どうしてこうなるのか知りたいと思っています。
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 前回、ブラジルの日系人の小学生がルーツ別の比較で断然成績が良い理由として、中川ヒロコ・イベッチさんの次の言葉を引用させていただきました。

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家族の名誉を苗字の重みに感じている。母は小学3年、父は4年までしか行かなかった。彼らは学歴でバカにされたから、私たちの教育は彼らにとってとても重要なものだった。私たちは、両親が大事だったから、その期待に応えようと勉強した。
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 ご両親が「学歴でバカにされ」て、子供たちはそうならないように願われた、そのご両親のお気持ちに共感して、ヒロコさんは一生懸命勉強したのです。親が無私の気持ちで子どもの将来を考え、子どもは親の気持ちを思いやって頑張る、というのは、日本でもブラジルでも良く見る光景です。そのような心の通い合う家庭で「勤勉・努力・真面目」が育っていくのです。


■5.「主体的に考え、判断し、行動」する人間を育てる

 お話しの中で、教育勅語と同様の徳目を挙げたアメリカの"The Book of Virtues"が3千万部も売れて、「第二の聖書」とまで呼ばれていることを紹介しました。まさに教育勅語が人類普遍の徳目を掲げている証左です。

 その教育勅語をご自身で読まれた経験を投稿いただいて、驚きました。

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 私は、小学生の頃から朝日新聞を読み、憲法9条は守るべきものと考えていた、ごく普通に「マジメに洗脳されていた」50代の日本人です。ですが、高校生の時に、自分で興味を持って教育勅語を読んだところ、まっとうなことが書かれていたので、暗記しました。

一部、これをそのまま現代の日本にあてはめるには無理がある、と感じる部分はありますが、多くの内容が、人として、そして、日本という国の一員としての、至極まともなあり方を説いています。今日の講座で、GHQですら教育勅語を否定はせず、「極端な解釈をされたのが問題」という認識でいたことを知り、ホッとしました。(坂本夏子さん)
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「マジメに洗脳されていた」高校生が、自分で教育勅語を読んでみて「まっとうなことが書かれていた」と感じ、「暗記しました」というのは、すごい主体性です。坂本さんはさらにこう言われています。

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 教育勅語は、基本的人権や個の尊重といった、民主主義の価値観と相反するものではなく、むしろ、主体的に考え、判断し、行動し、個人として「一隅を照らす」人になる土台を作ってくれる、大切な原則だと思います。
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 このご指摘には目から鱗でした。自分自身の心で他者への共感を持ち、そこから利他心を発揮し、「処を得よう」とする姿勢は、まさしく「主体的に考え、判断し、行動」する人間を育てます。


■6.本当に強い「個」はどこから生まれるのか?

 このご指摘は、以下のご質問への回答にもなっていると思います。

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一方で人権、個人を強く、などと言いながら、政治(外交含み)でも企業でも、悪い意味の「忖度(そんたく)」がたくさんあり、やるべきことをやらない、言うべきことを言わない、それによって国として組織として、力をそいでしまっていることが多いのは、どうしてなのでしょうか? 個がほんとうにつよいなら、言えるはず、やれるはず。
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「悪い意味の「忖度」「やるべきことをやらない」「言うべきことを言わない」というのは、結局は自分が損をしないように、という利己心からだと思います。利己心では、周囲に流され、何が共同体全体に対して正しいのか良いのか、主体的に考えません。

 個を本当に強くするのは、他者の苦しみ悲しみに自分の心で共感し、他者のために何をすべきかと自分で考え、社会の中で自分の持ち場で貢献しようという「主体性」でしょう。とすれば、共感-利他-処を得る、というプロセスこそが、強い個を育てる道です。「和の国」はそういう強い個が主体的に心と力を合わせることで生まれてきます。


■7.「天下は大物なり、一朝奮激の能く動かす所に非ず」

 しかし、現代の日本社会では、共感も利他心も弱まっているようです。こんなご意見をいただきました。

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 シンガポールでは、50歳以下の人たちは、席には座らず、50歳以上であれば、「どうぞ、お座りください」と席を譲ってもらえます。いろんな国を見てきましたが、日本が一番なってないです。弱者を労わらない今の若者の気持ちが怖いです。どうしたら、このような風潮を変えられると思われますか?
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他人の気持ちを汲む能力がない人とは、どう付き合うべきでしょうか。今や切迫した社会問題と化しています。
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日本が衰退しているのは、利他の気持ちが希薄になっているからでは?と感じました。
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 私自身も即効薬を持っているわけではありません。ただ、こういうご意見を読みながら、吉田松陰の次の言葉が脳裏に浮かんできました。

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今日の事誠に急なり。然れども天下は大物なり、一朝奮激の能く動かす所に非ず、其れ唯だ積誠之れを動かし、然る後動くあるのみ。

(今日の事態はまことに急迫している。しかし、天下は大物である。一朝の憤激で動かせるものではない。ただ真心を尽くすことが、これを動かす。そのようにして、ようやく動くのである。
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 80年代には反国旗・国歌運動が盛り上がって、オリンピック選手ですら、「国のために頑張る」とは言えなくなり、「楽しんできたい」などと言っていました。それに比べれば、池江選手のような若者が、周囲の人々に感謝しつつ、アスリートとして勇気や、絆を与えるべき、という深い考えを淡々と語れる時代になりました。

 こういう若者があちこちに出てきた事を希望として、我々もそれぞれの場で真心を尽くしていきましょう。それが天下を動かす道です。
(文責 伊勢雅臣)

■おたより

■やはり教育の原点は人間教育(竹彦さん)

20年来、伊勢先生のメールマガジンによって、授業も含めお世話になっております(高校社会科教員として)。

今回のコラムを拝読し、ミルやルソー思想のおかしさを、改めて理解しました。公民科授業では必ず出てくる二人ですが、やはりおかしいと、かつて中川八洋先生の著作で知ったことを再確認しました。

後半にご指摘の若者たちの他者を思いやることが少なくなったこと、電車通いの身としては実感している一つであります。効率優先ですべてを考えるならば、老人より自分の疲れを取るほうが優位になるのかもしれませんが、人として大事な人間的な生き方の原点を育てられないまま育っている感がございます。

やはり、人間教育を原点に据えるのが、人間が活力を持って生きていく原則なのだろうと思います。日本のエリートがある意味その大事な部分を見失ったまま育った者の成れの果てのような行動が目立つのも、真のエリート教育の原点もここにあるのだと思いたるものがございます。

■伊勢雅臣より

 現役の教員の方からご賛同のメールをいただくのは、嬉しい限りです。人間教育をどう復活させていくのか、国民的課題だと思います。



■リンク■

a. JOG(1171) 明治日本の躍進を生んだ人々はいかに育ったのか?
 古典教育を通じて情(共感)、意(利他)、知(処を得る)のバランスのとれた偉人たちが近代国家を作った。
http://blog.jog-net.jp/202006/article_4.html


■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

・Rousseau, Jean-Jacques"Emile"(English Edition, Kindle版), Amazon Services International, Inc.
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・Rousseau, Jean-Jacques"The Confessions of Jean Jacques Rousseau (Illustrated)"(English Edition, Kindle版),@AnnieRoseBooks, 2018
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/B079C287TF/japanontheg01-22/


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