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zoom RSS No.1105 「民安かれ」の経済学 〜 山本勝市著『社会主義理論との戦い』から

<<   作成日時 : 2019/03/15 22:27   >>

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 戦前・戦中・戦後と社会主義理論と戦ってきた山本勝市博士を支えたのは、「自分の考え方は天皇のみ心に背いていない」という自信だった。

■転送歓迎■ H31.03.17 ■ 50,161 Copies ■ 4,572,837Views■

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■■ 伊勢雅臣・講演 明日3/18(月)下関 ■■

 「奉祝天皇陛下御即位三十年山口県民感謝の集い」
日時:平成31年3月18日(月曜日)
  開場 12:30
  第1部 清興・式典 13:00-14:00
  第2部 講演「国民を結ぶ 皇室の祈り」伊勢雅臣 14:10〜15:10
場所:下関市生涯学習プラザ 海のホール
   下関駅下車 徒歩約15分
会費:無料
申込:不要です。直接会場にお越しください。
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■1.山本勝市博士の戦い

「社会科学とはかくも進歩しないものなのか」と、このほどKindle版として復刻された山本勝市博士の『社会主義理論との戦い』[1]を読みながら思った。

 山本博士は大正末期から昭和の初めにかけて、ドイツやソ連に留学し、そこでの統制経済や共産主義の実態を見聞して、帰国後、社会主義理論の誤りを学問的に訴え続けた。大東亜戦争直前の昭和12(1937)年から始まった統制経済に反対した著書『計画経済』は革新派軍人たちから絶版を勧告され、戦時中には教職から追放された。

 戦後は一時、国会議員として活動していたが、今度は共産主義者らの策謀によって、公職追放処分を受けた。さらには追放期間に「統制経済より自由経済の方が良い」という講演をして、東京高裁から禁固8か月の判決を受けた。追放が解除された後には、自由民主党政調副会長など要職にあって、自由経済による戦後復興を導いた。

 今日においては、「統制経済より自由経済の方が良い」とは当然至極の「常識」になっていると思っていたが、その「常識」は、山本博士のような人々の体を張った言論活動のおかげで根付いたものだ、と知った。同時に、現代世界においても、山本博士の主張がまだまだ理解されていない面が多分にあることを考えさせられたのである。

画像


■2.文在寅政権の「根本的誤謬」

 統制経済とは、商品やサービスの価格を政府が人為的に決めてしまう「価格統制」が出発点となる。たとえば、賃金は労働の「価格」であり、最低賃金を市場の賃金とかけ離れた水準に政治的に決定してしまうことは価格統制である。

 これを行っているのが、韓国の文在寅政権だ。大統領選での公約を実現しようと、2年間で約30%もの最低賃金引き上げを行った。各種の手当てを含めると時間990円相当。わが国の東北や四国、九州の760円よりはるかに高く、東京の985円すら上回る。

 山本博士は、すでに80年近くも前、昭和15(1940)年の『社会主義計画経済の根本的誤謬』の中で、最低賃金を上げる政策が「根本的誤謬」であることを、こう説明している。

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 他の労働者を犠牲にすることなくして労賃を高める方法は、資本の増加又は生産過程の改善によって、労働の一般的生産性を高めるといふ以外に方法はない。
もし政府が単に最低労賃の立法によって自然労賃を高めるならば、企業のうち自然労賃で漸く引合ってゐたものは損失を免れず。従って生産を縮小して労働者を解雇する外はなくなる。かくて、外部からの人為的な市場労賃引上げの結果は失業労働者の増加といふ現象となってあらはれ、・・・[1, p112]
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 山本博士の指摘通り、韓国の本年1月の失業率は4.4%と急上昇し、世界的な金融危機の影響を受けていた2010年1月の4.7%以来の最悪となった[2]。韓国最大の新聞社「中央日報」は「若者に恥ずかしい最悪の大卒失業率=韓国」と題した社説で、次のように文政権を痛烈に批判した。

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教育部が卒業生57万人を全数調査(2017年末基準)したところ、就職率が前年(67.7%)より1.5%ポイント下がった66.2%にとどまった。2011年以降就職率が67%以下に落ちたのは今回が初めてだ。雇用政府を前面に出した文在寅政府にもう一つの雇用惨事が追加されたわけだ。[3]
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 大学を卒業しても3人に1人が就職できないのでは、かつての日本の就職氷河期なみだ。アベノミクスで好転した日本の就職内定率98%と比べれば、天地の差がある。どうりで日本企業への就職を目指す韓国人青年が多いはずだ。

 文政権はこの「雇用惨事」をなんとか取り繕おうと、公共機関に短期バイト採用を割り当てて、「雇用粉飾」という批判まで浴びた。「価格統制」が需給のアンバランスを引き起こし、それを抑えるために、今度は「需給統制」にまで手を広げざるをえなくなっていく。こうして統制の網は限りなく広がっていくのである。


■3.市場の調整機能を無視して「介護人材が38万人不足」?

 日本も他人事ではない。「2025年には介護人材が38万人不足する」などと喧伝され、その対策として外国人労働力導入が不可欠である、というような説がまことしやかに唱えられる。これも一種の需給統制ではないか。

 経済企画庁経済研究所長などを経て、現在、大正大学地域創生学部教授の小峰隆夫氏によると、こうした労働力不足の計算は、賃金や生産性、企業の参入や撤退など、すなわち市場による調整は無視して、単純に需要と供給が現在の動向を続けたら、両者のギャップがどれだけ広がるのか、という計算をしているという。

 市場調整機能のもとでは、介護人材が不足すればその分野の賃金水準が上がり、他分野から介護分野に入ってくる人々も当然でてくる。また、企業側でも賃金上昇を吸収すべく、生産性向上に努める。介護作業におけるロボット活用などで、一人の介護士がお世話できるお年寄りの人数が増えれば、不足人数も圧縮できる。

 こういう生産性向上が進まない企業は高い賃金を払えずに、市場から退場していく。その分、生産性の高い企業が事業を拡大して、このプレーヤー交代だけで、業界の平均的な生産性も上昇し、不足人数も減る。

 こういう市場による調整機能こそ、自由経済の本来的な強みであるのに、それを無視した需給を計算しているのでは、まさに統制経済での官僚仕事そのものではないか。


■4.統制経済は人智を超えた所業

 市場の調整機能を無視した価格統制や数量統制がうまくいかない例を、山本博士は戦時中の配給制度の経験で紹介している。

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 過般も筆者は、山口県宇部市を訪問し、そこの肥料会社の首脳者から、肥料は倉庫に充満して仕末に困つてゐるといふ話から、統制会社の配給無能力に関する満々たる不平を聞かされた。
然るに他方農民にとつて、肥料は赤子に乳の如き状況にあることは申すまでもないのに、それがなかなか配給せられず、たまたま配給せられても、適当な時期に届かぬといふ不平は、何人もしばしば聞かされてゐる所であらう。[1, p314]
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 山本博士は、この原因が戦争中の輸送能力不足とか、統制会社の無能力ではない事を、素人にも分かりやすく説明している。輸送能力が原因ではない事は、日清戦争でも日露戦争でもこんな問題は起きておらず、ひとえに配給制度を採用した今次大戦でしか見られない現象であることから、明らかだという。

 また、原因を「統制会社の無能力」に帰するのも間違いで、そもそも厖大な商品点数、様々な生産地、消費地、流通経路を計画すること自体が、人智を超えた所業である事を、次のような例で説明する。

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 北海道の石炭増産計画を成功せしめるためには、横浜や門司の荷上げ人足の募集計画のみならず、荷揚げ人足の住宅計画から、其の子供の学校教室の建築計画。そのための大工、左官の計画から、木材の運搬伐採の計画。運搬人、伐採人の住宅計画から米の計画……といふ如くに、世の中にありとある一切の生産配給の計画が総合的に樹立されてゐなければならぬ。[1, p324]
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 山本博士はこうした統制経済に反対する主張をしたために、戦前戦中は革新派軍人に睨まれ、戦後は共産主義者たちの策略で公職追放処分を受けた。両者とも同じく統制経済を信奉しているからだ。


■5.「生活保護で貰ったお金をパチンコに使って何が悪い」

 統制経済の後継思想が「福祉国家」である。ソ連などで、計画経済に基づく共産主義体制の失敗が明らかになると:

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多くの社会民主主義者たちは、生産手段の公有制による中央集権的計画経済という手段を断念した。
 しかし、富と所得の平等分配という目的を放棄したわけではなく、・・・生産手段の私有制、市場メカニズムをそのままにして、富と所得の平等化という社会主義本来の目的を徐々に実現しようと考えるに至った。
 これがいわゆる「民主社会主義」の台頭であり、「福祉国家」の着想である。[1, p162]
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 「富と所得の平等分配」がうまくいかない、という事は、革命直後のソ連がすでに経験している。

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 一九一七年秋の共産革命によつて大地主、寺院等から没収された土地は、細分して土地をもたぬ農民たちに分配せられた。そして自家用としての保有穀物を除く剰余は、すべて供出せしめる方式が採られた。
ところが農民の供出成績は香(かんば)しく行かないために、都市住民の食糧不安となり、遂に、武装徴発隊を組織して強権を以て供出せしめようとしたが、至る所に農民の一揆を見たのみならず、農業生産は一路減退して、農民たちは辛うじて自家の糊口をしのぐだけを作るに止める、といふ傾向を示すに至つた。
 ここにおいて都市の食糧不安は容易ならぬ事態となり、一面では、農業の全面的社会主義化の提唱もあつたにかかはらず、レーニンが事態の打開のためにとつた政策は、社会主義化とは正反対に「中農の要求を容れて、穀物の自由取引を認むる」ことを本質とするいはゆる新経済政策であつたのである。[1, 374]
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 国が生活保護を提供するのが当たり前になりつつある現代日本では「生活保護で貰ったお金をパチンコに使って、何が悪い」というような主張をする輩までいる。それに対する明確な反論を山本博士は用意している。

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・・・国家が保障するとか、全体の責任だとかいっても、事実国民のある人々が受取るものは、必ず国民の他の人々から与えられねばならないのだ。[1,p164]
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 この点に気がつけば、「他人が働いて稼いだお金を巻き上げてパチンコに使うのを、君は正しいと考えるのか」と反論できよう。


■6.「国家が保障するということは、官吏の手に委ねること」

 もう一点、山本博士が指摘するのは、「国家が保障するということは、実はその配慮を官吏の手に委ねる、ということである」という点だ。

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 いわゆる福祉国家を追求する限り、政府の仕事は増える一方であり、歳出は増加する一方であり、従って税金は高くなる一方である。[1, p172]
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 ここから、「一般消費税の導入で財政は救えない」という博士の主張が出てくる。今日でも通ずる、いや今日では忘れられた本質的議論である。

 ただし、ここで留意すべきは、

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困窮者に対して国家がミニマムを保障するということの必要に関しては、原則的には何人にも異論はなく、問題は、その程度とその組織と、ことにそれを動かす精神の如何だということである。[1, p166]
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「福祉国家」という美名のもとに、官僚が一部の国民から強制的に税金を取り立て、それで他の国民の暮らしの全般の面倒を見る、という「精神」が問題だと、山本博士は言うのである。


■7.「自分の考え方は陛下のみ心に背いていない」

 山本博士自身が目指すのは、次のような「日本型福祉社会」である。

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 個人の自助努力と家庭や近隣・地域社会等の連帯を基礎としつつ、効率のよい政府が適正な公的福祉を重点的に保障するといい、自由経済社会のもつ創造的活力を原動力とした我が国独自の道[1, p199]
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 これはひたすらに「民安かれ」を祈られてきた皇室の伝統を、現代経済学の用語で語った理想と言えよう。この理想を目指して、山本博士は「社会主義理論との戦い」を続けてきたのだが、その足跡を次のようにふり返っている。

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私は戦前、戦時を通して市場メカニズムの崩壊を憂えて文章を書いたために、著書は発禁になり、教職を追われて、ついに特高警察の監視下に置かれました。しかし、それでも勇気を失わなかったのは、近衛(文麿)さん、東条(英機)さん、その他誰よりも上に天皇がいまして、自分の考え方は陛下のみ心に背いていない、という自信でした。それが唯一の心の支えであったといっても過言ではありません。
 戦後もまた私は、占領軍から追放を受け、禁錮八カ月の刑の宣告までも受けましたが、陛下が宮中のお祭りやお歌会の行事を断たれないと聞き、また陛下が、私たちに幾倍もする御苦しみに堪えておられると思うと、追放も有罪判決も、それほど苦にはなりませんでした。[1, p304]
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 皇室の「民安かれ」の祈りをどう具現化するか、山本勝市博士の経済学は、そこを目指しているのである。
(文責 伊勢雅臣)


■リンク■

a. JOG(930) 大御宝(おおおみたから)の経済学
 国民の幸せを目指す「経済民本主義」。
http://blog.jog-net.jp/201512/article_3.html

b. JOG(834) 自立と自助の経済学 〜 澤上篤人氏の「金融の本領」
「こんな世の中を子供たちや孫たちに残してやりたい」と願う将来方向で頑張っている企業を応援する。
http://blog.jog-net.jp/201402/article_1.html


■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 山本勝市『社会主義理論との戦い(山本勝市博士 論文選集)』★★★、国民文化研究会、H31
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/B07MPQ2BC1/japanontheg01-22/

2. REUTERS「1月の韓国失業率は4.4%、9年ぶりの水準に悪化」
https://jp.reuters.com/article/southkorea-economy-unemployment-idJPL3N2076JK

3. 中央日報「【社説】若者に恥ずかしい最悪の大卒失業率=韓国」H301228
https://japanese.joins.com/article/586/248586.html?servcode=100&sectcode=110

4. 小峰隆夫「無意味な人手不足の人数推計」『週刊東洋経済』H310119




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