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zoom RSS No.1010 創造、成長、利他〜「三方良し」経営の原動力

<<   作成日時 : 2017/06/18 07:55   >>

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 創造、成長、利他を喜ぶ人間のパワーを引き出すことが、三方良し経営の原動力。

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■1.大阪府松井知事がパリで説いた「三方良し」

 6月14日、パリで開かれた博覧会国際事務局(BIE)総会で、2025年の万国博覧会誘致を目指す大阪府の松井知事が「河内弁英語」でPRをした。その中で、大阪・関西では古くより『売り手』『買い手』『世間』の3者が満足する形『三方良し』で物事を進める和の精神が重んじられてきた」と説明した。[1]

「三方良し」は、日本の経営のフレームワークとして、拙著『世界が称賛する 日本の経営』[a]の中で紹介した。アメリカから入ってきた株主資本主義的経営では「株主良し」しか視野にないが、日本的経営では、従業員も含めた「売り手良し」を考え、さらに顧客のための「買い手良し」、社会のための「世間良し」も同時に追求する。

 今まで多くの日本企業がこの「三方良し」を追求してきたからこそ、江戸日本は260年にも及ぶ平和と繁栄の時代を築き、明治・大正の日本はわずか半世紀で欧米に追いつき、戦後は世界史の奇跡と呼ばれる経済復興と高度成長を実現した。

 ところが、昨今の日本企業は米国から入ってきた「株主良し」経営が「グローバル化」だと勘違いして、三方良し経営の強みを忘れ去って、活力低下を招いている。逆に欧米の卓越した企業は三方良し経営の強みを学んで、競争力を強化している。これが『世界が称賛する 日本の経営』での主張点であった。

「三方良し」の追求は企業経営に活力をもたらす。それは三方良し経営が、人間の持つ3つの特質、すなわち、創造、成長、利他を喜ぶという特質に立脚し、そこから来るパワーをフルに活用するからである。本稿では、この点をもう少し考えてみよう。


■2.創造の喜び

 まず、人間は自分なりに何かを創り出す事に喜びを感ずる。たとえば『世界が称賛する 日本の経営』では、日本電産の創業者・永守重信(ながもり・しげのぶ)の語る次のようなエピソードを紹介した。[a, p22]

__________
 永守が出張先で取引先の担当者に人気のラーメン店へ連れていってもらったときのこと。人気店というが店構えはごく普通だった。だが、永守が店の入口に立つと、店内から若い店員が飛んできてドアを開け、「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。そして注文を聞くと厨房に大きな声で伝えて、親しみを込めた笑顔で「お客さんは関西からですか」と話しかけてくる。
その間も店の入口に気を配り、新しい客が来ると永守のときと同じように、客を迎えている。しばらくして、出てきたラーメンを食べてみると、特別美味しいわけではない。

 つまり、ラーメンの味が他店より五倍美味しかったり、五倍の速さで出てきたりはしない。しかし、店員たちの接客のよしあしで、客の気分を百倍よくすることは難しいことではないのだと。店が繁盛しているのは、店員の意識の高さ、つまり経営者の意識の高さによるものだと。
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 株主良し経営では、店員はお客が来たら、空いた席に案内し、注文を聞いて、、、等々、仕事を標準化して、バイト店員でも即戦力として使えるようにする。そうすれば誰でも雇えるから賃金は安くて済み、また売れ行きが落ちて人が余ったらすぐクビにできる。そうして人件費を切り詰めて、株主だけが儲けるようにする。

 従業員は「手足」であって「頭」なぞ使わなくて良い、というのは奴隷制に通ずる考え方である。欧米社会においてはギリシャ・ローマの昔から、アメリカの黒人奴隷に至るまで奴隷制が広まっていたので、企業経営もその発想から、従業員は言われたことをやっていれば良い、というシステムになってしまったのだろう。


■3.創造の喜びが後押しする三方良し

 奴隷制がそれほど広まらなかった我が国では、経営においても自然に従業員一人ひとりの創意工夫を発揮させる方向に向かった。そして、各人に自分の仕事にどのように取り組めば良いかを考えさせる。

 このラーメン店の店員は、お客が来たらさっとドアを開け、親しみを込めた笑顔でお客に接する、ということを実行している。それは自ら考え出した事ではなく、先輩の真似をしたのかもしれない。たとえ真似にしても、先輩のやり方を観察して自分でもやってみて、その効果を自分で判断する、というのは創造的な行為である。

 こういう客扱いによって、自分も元気が出るし、顧客も気持ちよく、店の売り上げも上がる。客が増えれば、地元の商店街も活気が出る。こうして、この店員は自分の働きを通じて、売り手良し、買い手良し、世間良しに貢献しているのである。

 人間はこのように創造力を発揮して、何かを自分なりに考え出すことに喜びを感ずる。この店員は自分の創意工夫が良い結果をもたらした事を達成感と誇りを感じているだろう。逆に、お前は余計なことを考えずに言われた通りの仕事をしていればいい、と創意工夫を妨げられていたら、彼は不満を感じるはずだ。

 創造の喜びを味わった従業員はさらなる創造に向かう。それがより良い三方良しを実現していく。創造の喜びが三方良し経営の原動力の一つなのである。


■4.成長の喜び

 第二の人間の特質は自己の成長を喜ぶことである。

 日本電産は経営の傾いた企業を50社以上、買収したり、合併したりして立て直してきた。その際に、一人の人間も切ることなく、ただ数人の役員を指導に送り込むだけである。そして彼らが最初に教えるのは「6S」すなわち、整理・整頓・清潔・清掃・作法・躾の6つの「S」だ。

 床に落ちたものを拾い、真っ黒に汚れた作業服を洗濯し、汚れた設備を磨く。すると会社の業績がみるみる上がっていく。それを経験した従業員は言う。

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 社員が「磨けば短時間に光ってくる」「その効果が目に見えてわかってくる」って言うんです。ある種の達成感というのか。みんなでやれば成果が出る。そういうことを体感させてくれた部分がある。

 不思議なもので、便器を自分で掃除すれば、その後きれいに使おうと思いますし、人にもきれいに使ってもらいたいと思います。何か壊れているものを見ると、「あ、会社のものが壊れている」という気持ちになります。
今までは壊れたら総務に言えばいいとか、自分にはあまり関係ないという世界だったんですけど、意識が変わりました。ものを大切に使おうとかそういう気持ちは自然に芽生えつつあります。何か自分のもののように感じる、親身に感じてくるんです。[a, p24]
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 自ら整理整頓に取り組むことで、それが生産性や品質を良くする事を知る。その成果を通じて自分の成長を実感し、嬉しく思う。

 成長の喜びは人間の本性に根差したものだ。赤ちゃんが初めてよちよち歩きできた時は、嬉しそうな顔をする。子供が初めて自転車に乗れた時や、大人もゴルフでベストスコアを出した時にも何とも言えない喜びを感ずる。人間は様々な分野で成長したいという欲求を抱き、自らの成長を実感した時に嬉しく感ずるのである。


■5.成長の喜びを内包する終身雇用制

 日本企業では、昔から、従業員の成長を前提とした経営をしてきた。たとえば昔の商店では子供を丁稚(でっち)として雇い、掃除や飯炊きから始めて、仕事の基本を教え込んでいく。丁稚は仕事の一つひとつを覚え、できるようになるたびに成長の喜びを感ずる。やがて一人前になると暖簾(のれん)分けをしてもらって、自分の店を持てた時には格別の嬉しさを味わう。

 近代の日本企業においても、終身雇用制によって、学校を卒業したばかりの青年を雇い、じっくり職場で仕事を教え込んでいく。さらに営業から始めた人には生産管理や調達など、別の分野の経験を積ませたりもする。経験を積み、能力が伸びるのにしたがって、係長、課長、部長と昇進させていく。

 終身雇用制とは単に企業への忠誠心を育てる、という側面だけでなく、長期安定雇用の中で従業員をじっくり成長させるという本質がある。

 この点、株主良し経営では、企業の中で従業員を成長させようという発想はない。あるポジションが空いたら、それに適した経験者を即戦力として外部から雇う、というのが原則だ。ポジションに見合った能力を持たない従業員はクビにする。従業員の方も、より良いポジションを求めて、他社に応募する。

 三方良し経営では従業員に成長の喜びという「売り手良し」を提供する。従業員の能力が高まれば、より高い顧客満足を達成でき、「買い手良し」につながる。さらに成長した従業員は、より良き国民となるので、それが「世間良し」ともなる。従業員の成長の喜びが、三方良し経営の第二の原動力である。


■6.利他の喜び

 三方良し経営の第三の原動力が「利他の喜び」である。人間には自己保全のための利己心があるが、それが満たされると今度は世のため人のために役に立ちたい、という欲求を持つ。

 約50人の従業員の中で、知的障碍者が7割を占める日本理化学工業で、知的障碍者の採用を始めたのは、近くの養護施設から、卒業する二人に働く体験をさせてくれないか、と依頼された事がきっかけだった。二人の少女を受け入れたのだが、その仕事に打ち込む真剣さ、幸せそうな顔に周囲の人々は心を打たれた。

 社長の大山泰弘(やすひろ)さんは、「会社で働くより施設でのんびりしている方が楽なのに、なぜ彼らはこんなに一生懸命働きたがるのだろうか」と不思議に思った。

__________
 これに答えてくれたのが、ある禅寺のお坊さんだった。曰く、幸福とは「人の役に立ち、人に必要とされること」。この幸せとは、施設では決して得られず、働くことによってのみ得られるものだと。[a, p59]
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 株主良し経営では、従業員は給料目当ての利己心で仕事をしている、と考える。三方良し経営では、従業員は自分のためばかりでなく、仲間のため、お客のため、世間のために働くことを喜ぶ利他心を持つ、と考える。「人の役に立ち、人に必要とされること」が幸福だという利他心が人間の特質だという人間観があるのである。


■7.利他心のパワー

 株主良しだけを狙う経営と、三方良しを追求する経営と、どちらが従業員の生産性を高めるのだろうか?

 よく言われるのは、株主良し経営では成績の悪い従業員はすぐに首になるので、必死で働く。だから、終身雇用制でぬるま湯に浸かった従業員よりも生産性が高い、という説である。

 しかし、これは終身雇用制が形骸化して、三方良しなど忘れ去った日本企業について言えることだろう。経営者が従業員全員に対して、常に三方良しの実現に向けて後押ししている企業では、緊張感のある職場が実現できるはずだ。

 また、首になることを恐れて必死で働く、というのは、発展途上国ならまだしも、先進国社会においては、真の動機づけにはならない場合が多い。

 人間、ある程度、豊かになれば、利益による動機づけは次第に効力を失っていく。年収1千万円の人に「1億円払うから10倍働け」と言っても、「いやもう収入は十分だから、もっと自由な時間が欲しい」などと応じない人も多いだろう。また一生懸命頑張っても、儲けるのは株主ばかりとなれば、従業員の方も面白くないので、手を抜きがちになる。

 それに比べて、三方良しのために働くことは、良い意味できりがない。たとえば、豊田自動織機を開発した豊田佐吉は、紡績事業でも巨大な利益をあげるようになったが、

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 さて、其の利益をどうされたかと言うと、公債も買わなければ土地も買わぬ。他処(よそ)の会社の大株主や重役にもなられぬ。只次から次へと自分の紡織業の拡張につぎ込まれる。そうして日本の綿糸布の総高の何割は自分の力で出来る様になった。これが今一歩も二歩も進んで、此処までゆけば大分御奉公になるがなあと言って、一人で喜んで居られる。[a, p132]
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 このような利他心からの事業欲には際限がない。経営者も従業員も三方良しを目指して事業に取り組んでいけば、もうこれで十分という天井はないのである。しかも、経営者が自分たちのため、世間のために頑張っている姿を見れば、従業員も自ずから頑張るだろう。


■8.「国良し、世界良し、子孫良し」の三方良し国家

 以上、創造、成長、利他の喜びが、三方良し経営の原動力であることを見てきた。そして、これらの人間本来の特質に根ざすことで、三方良し経営は、株主良し経営よりも優れたパフォーマンスを発揮する可能性を十二分に秘めている事が見てとれた。

 従業員に創造、成長、利他の喜びを経験させるということは、人作りそのものである。松下幸之助は「松下電器は人をつくっています。電気製品もつくっていますが、その前にまず人をつくっているのです」とお客に言うように従業員を指導していた。[a, p177]

 三方良し経営で作るべき人とは、創造、成長、利他の喜びを知り、それを自分の仕事、自分の人生で追求する人間である。

 多くの企業がこういう人作りに励めば、それぞれが三方良し経営で繁栄するだけでなく、活力と志ある国民が増えて、国全体も「国良し、世界良し、子孫良し」の三方良し国家となるだろう。

 松井知事は「『三方良し』で物事を進める和の精神」と言われたが、三方良しとはまさに売り手、買い手、世間が和する世界を追求することである。「大いなる和」、すなわち「大和」の国、日本を実現する原理がここにある。
(文責 伊勢雅臣)

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1. 産経新聞、H29.6.14「【大阪万博誘致】大阪色前面に花の都で火花 松井知事、河内弁英語で訴え」
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No.1010 創造、成長、利他〜「三方良し」経営の原動力 国際派日本人養成講座/BIGLOBEウェブリブログ
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