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zoom RSS No.921 国土が育てた日本人

<<   作成日時 : 2015/10/11 09:53   >>

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 日本列島が育てた世界断トツのチームワーク。しかしグローバル社会ではムラ意識からくる不適合も。

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■1.チームワークの得意な日本人

 アメリカに住む友人のAさんが一時帰国して、面白い話を聞かしてくれた。最近、日本人とアメリカ人合同のゴルフ大会に参加して日本人のチームワークの凄さを改めて感じた、というのだ。

 大会は「ベスト・ボール」というルールで、4人でそれぞれボールを打ち、その4つからベスト・ポジションを選んで、そこからまた4人がそれぞれ打つ。こうして各ホールで4人のうちのベスト・スコアだけをつけて、最良のスコアの組が優勝するという団体戦である。

 Aさんの組はたまたま日本人4人で、初めて会った人ばかりという組合せだったが、2、3ホールやれば、それぞれの腕前、得意不得意が判る。たとえばドライバーショットでは、高齢のAさんは方向性は正確だが、距離がでない。若手のBさんは距離はぶっ飛ばすが、時々とんでもない方向にボールが行く、等々。

 数ホールすると、特に相談もしていないのに、Aさんが先に打って、とりあえず距離はでなくとも、そこそこ良い位置を確保するようにした。その後でBさんを打たせると、もう最低線は確保しているので、プレッシャーから解放されて、距離も方向性も素晴らしい一打が出る。日本人の組ではそんなチームワークがごく自然に出来た。

 Aさんたちの前のアメリカ人ばかりの組は、そんな事はおかまいなしに、各人が「我こそは」とぶん回している。どうやら、誰か一人が良い当たりをすれば良いので、自分は失敗しても良いからと、難しいチャレンジを楽しんでいる様子である。大きな池越えのホールでは4人とも大胆な挑戦をして、全滅していた。

 一人ひとりの力量は、アメリカ人組の方が高いのに、チーム戦となると、日本人組が得意のチームワークを発揮して、最終スコアでは僅差で勝ったという。

 Aさんは、日本の自動車部品メーカーの現地法人の役員をしているが、アメリカ市場では、日系メーカーが最高品質の車を競争力ある価格で販売し、いまや北米市場でのシェアは4割近くに達するという。その原動力がこのチームワークであり、アメリカ人従業員たちにも教育を通じて、日本流のチームワークを発揮させているという。


■2.日本の国土の特性

 Aさんの話を聞いた後に読み始めた国土学の権威・大石和久氏の近著『国土が日本人の謎を解く』[1]で、日本人のチームワークの良さは日本列島の国土の特性が生み出した、というの指摘に、目から鱗の思いをした。この著書は、欧米や中国との国土の違いから民族性の違いが生まれている事を鮮やかに解き明かしている。

 日本の国土の特性を大石氏は10の特性にまとめているが、チームワークの発達に影響したのは、次の3つである。

・細長い弓状列島: 日本列島の最大幅は250キロ程度しかないが、列島の東北端から南西端は直線距離でも3300キロに達する。

・脊梁山脈の縦貫: その細長い列島の中軸を1〜3千メートルの高い脊梁山脈が縦貫している。ほとんどの河川は、この脊梁山脈から発して海に注ぐので、きわめて短く、急流となっている。

・数少なく、狭い平野: 山と川が多いので、平野は内陸地域では盆地として、海岸地域では河川が押しだしてきた河口の土砂の上にしかない。

 大きな平野として関東平野や大阪平野があるじゃないか、と思うだろうが、これらの平野がまとまって使えるようになったのは、江戸時代以降のことである。

 それまでは多くの川が両平野の中を流れており、洪水がある度に流路を変えるので、平野の中に点在する小高い所だけに、人が住んだり、田畑を作ったりしていた。

 江戸時代に入ってから、江戸湾に注いでいた利根川を銚子の方に付け替えるとか、大阪平野を北上していた大和川を堺市の方に流す、などというご先祖様の治水工事のお陰で、ようやくまとまった大きな平野として使えるようになったのである。[a]


■4.数百人単位の村で数千年、暮らしてきた日本人

 この小平野が散在する国土で、日本人は数多くの小さな村に別れて暮らしてきた。天保5(1834)年の全国の村の数は6万3千余もあり、平均的な人口は400人ほどだった。縄文時代の三内丸山遺跡も、人口4〜5百人程度と推定されているから、日本人は細かく散在した平地に、縄文時代から江戸時代まで数百人程度の小さな村で暮らしてきたのである。

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 狭く小さく分散している平野の、きわめて小さな集落の中で、歴史のほとんどの期間を暮らしてきたことが、われわれを規定しているのである。

 ここでは、何千年という期間にわたって、顔見知り仲間が共同作業によって、灌漑設備の設置や水の配分・田植え・稲刈り・道普請・屋根の葺き替え・冠婚葬祭などを協力し分担して行うという暮らしをしてきた。

 その結果、集落の中でのもめ事を最も忌避し、全戸参加による話し合いによって物事を定めたり、争いごとを解決してきたのである。これが、われわれの日本人の秩序感覚を磨いてきたのである。[1, p119]
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 日本人がチームワークが得意だというのも、こういう数千年の歴史の中で磨かれたムラ意識の所産なのだ。


■5.中国の大平原が独裁社会を生む

 日本人が分散した小平地で数百人単位の村落で生活してきたのとは対照的に、中国人は広大な平原で暮らしてきた。たとえば、北京から上海まで南北で1200キロ、最大幅も600キロほどの平原が広がっている。1200キロといったら、東京−福岡よりも長い距離だ。

 この広大な地域に水を引くには大規模な土木工事が必要だが、そのためには人民を大量動員できる権力が必要である。随の煬帝は、610年に総延長2500キロメートルにも及ぶ京杭大運河を完成させたが、このために100万人もの動員を行ったという。それだけの権力集中が中国にはあった。[1,p144]

 しかも、この大平原を目指して、周辺の異民族が押し寄せる。紀元1年からの100年間では、18回もの異民族の侵入や、反撃の征討があった。異民族の侵入から護るべく、都市を巨大な壁で囲み、さらには万里の長城を築いて国土全体を囲んだ。

 こういう国土では、民衆も自分たちを護ってくれる強力な権力者を必要とする。大平原が独裁社会を生むというのは、お隣のロシアにもあてはまる現象だ。

 しかし独裁社会で、腐敗や民衆の搾取が進み過ぎると、民衆が反乱を起こし、内乱の中から次の権力者が登場する。王朝の交替時期には、常に大規模な戦乱があった。「革命は銃口から生まれる」と毛沢東は言ったが、共産革命に限らず、歴代の王朝交代は常に暴力で行われてきたのである。

 各皇帝は自分の権力を守るために軍隊を持つ。現在の中国の軍隊は、国家に帰属しているのではなく、共産党に属しているが、共産党書記長という皇帝が、軍隊を握っている、と考えれば、今の共産党政権も中国の歴代王朝の伝統をそのまま引き継いでいるのである。


■6.ヨーロッパの国土が産んだ「公」の概念

 ヨーロッパの国土は、日本と中国の間に位置づけられるだろう。ヨーロッパの平野は、日本よりははるかに大きいが、中国ほどではない。しかもアルプス山脈が中央に聳えて、南北、東西を分断している。日本のように多くの地域共同体に別れていたので、封建制が発達した。

 しかし、欧州が日本と異なり、中国と似ている点は、ゲルマン民族やアジアの騎馬民族が周期的に襲ってきた、ということである。そのため、ヨーロッパの共同体は城壁で囲まれた都市国家となった。

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 パリを見ても、シテ島周辺から始まった都市城壁は、人口増加などの時代の変化とともに拡大し、最終的には周囲34キロメートルという大きさになったが、いつの時代にも大勢の人が肩がぶつかるようにひしめきあって壁の中で暮らしてきた。

しかし、都市規模が大きくなると、全員が顔見知りというわけでもないから、わが国のように「みんなでとことん話し合って、みんなで守り毎を決め、みんなでの約束として遵守(じゅんしゅ)する」というわけにはいかない。

 厳密な表現の文章による成文のルールを定め、それを守ると約束する人だけが城壁内に暮らすことができる権利を得るということにならざるを得ない。[1,p109]
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 そして、ひとたび外敵に襲われると、城壁の中に閉じこもって、市民が結束して防衛にあたる。「市民」とは、成文法を守る約束をし、いざという時には防衛の義務を果たすことで、城壁内に住むことを許された人々のことである。こうして同じ城壁内で住み人々が、共通のルールを守り、共同体のために尽くすところから、「公」の概念が生まれた。


■7.ヨーロッパの「公」、日本の「共」

 ヨーロッパの国土が都市国家の形成を通じて、「公」の概念を育てたように、日本や中国の国土もそれぞれに特徴をもった政治構造を産んだ。

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 日本のように、細かな平野が分散的・孤立的に存在しているのであれば、強大な権力は必要なかったし、また生まれもしなかった。これは日本人の強健への拒否や忌避という性癖にもつながっているし、逆にいえば中国人は強権好きということなのかもしれない。[1,p144]
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 小さな集落で、互いに顔をつきあわせながら、一生を暮らしていくことから、仲良く暮らしていくことが最優先となった。集落で物事を決定する場合も、民俗学者の宮本常一氏が記録しているように、全戸が賛成するまで徹底的な話し合いが行われ、時には反対者がいなくなるまで3日3晩も続けられたという。

 多数決が民主主義の意思決定ルールなのだが、十二分な話し合いがないままに決を採ろうとすると「強行採決」と批判するのは、このムラ意識からである。独裁者を嫌い、「強行採決」を嫌う気性は、日本の国土で数千年も続いてきたムラ社会で培われたものである。

 大石氏は、ヨーロッパで「公」の概念が育ったが、日本でそれに対するのは「共」であるという。「公」と「共」は性格を異にするが、個人と共同体と結ぶ絆として機能することで、法治主義、自由民主主義などの基盤となる。日本がアジアでいち早く、近代的法治国家としてスタートできたのも、欧州の「公」の役割を「共」が果たしてきたからであろう。

 それに対して、中国の独裁社会では、一人の皇帝が億兆の民を支配する。多数決どころか、民衆の投票すらあり得ない。法とは「公」や「共」のルールではなく、皇帝が臣下や民衆に下す命令である。

「公」も「共」もない社会では、およそ法治主義も民主主義も根付かない。民衆が声をあげられるのは反乱による武力革命だけだ。


■8.ムラ意識のグローバル社会での適応障害

 日本人は数千年のムラ社会の経験で、世界でも断トツのチームワークを得意としている。東日本大震災で世界に感銘を与えた互いへの思いやりは、このチームワークが発揮されたものである。

 しかし、ムラ意識は良い点ばかりではない。現代のグローバル社会はヨーロッパ流の「公」を中心とした構造をとっているので、日本流のムラ意識が不適合を起こす場合がある。

 たとえば、昨今の集団的自衛権の論議の中で、こんな発言をした学生がいた。

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 もし本当に中国や韓国が攻めてくるというのなら、僕が九州の玄関口で、とことん話して、酒を飲んで、遊んで、食い止めます。それが本当の抑止力でしょう?
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 平和なムラ社会の中でしか通用しない発想である。天安門では民主主義を求める学生・青年たち大勢を、自国民でも平気で虐殺した政権である事が、まるで判っていない。

 彼らが反対する「集団的自衛権」とは、欧州の都市国家群が外敵から共同で防衛した歴史から出てきた概念で、欧米人にはごく当たり前の話なのだが、平和なムラ意識の持ち主には、改めて勉強して貰わないと理解できないのであろう。

 そういう意味で、国際派日本人を目指す人々には、グローバル社会の国際常識を学ぶ必要があるのだが、そのために一番、良い方法は、国際社会に触れ、外からの視点で自らの強み弱みを認識することだ。

 弊誌916号[b]で「西側先進国で、わが国ほど、政治、マスコミ、法曹、教育の各界で、いまだに左翼がしぶとく巣くっている政治的後進国はない」と述べたが、政治、マスコミ、法曹、教育の各分野こそ、もっとも国際社会から遠く閉ざされて、ガラパゴス的なムラ意識の残存している分野だからだ。

 日本人が国際社会で活躍・貢献しようとすれば、ムラ意識の良い面であるチームワークを発揮しつつも、このガラパゴス島から一度、外に出て、西欧流の「公」の概念を良く理解しなければならない。
(文責:伊勢雅臣)

■リンク■

a. JOG(821) ご先祖様の国土造り
 我が先人たちはより安全で豊かな国土を子孫に残そうと代々、努力を積み重ねてきた。
http://blog.jog-net.jp/201310/article_7.html

b. JOG(916) 戦後左翼の正体
No.916 戦後左翼の正体 「安倍に言いたい。お前は人間じゃない! たたき斬ってやる!」と言う人々の正体を探ってみれば、、、 .http://blog.jog-net.jp/201509/article_1.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 大石久和『国土が日本人の謎を解く』★★★、産経新聞出版、H27
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4819112651/japanontheg01-22/

■おたより

■利光さんより

興味深く拝読しました。

日本人のキャラクターについてはもう一つ、天災があります。

天災は発災すると、お互いに協力し合う必要があります。
 地震・津波・噴火など、
   そのため、協力と助け合いがあり、感謝の心を育てます。
   これが、さらに、恩返しに善の波及効果が生まれます。

一方、人災の国は、
   怨念や憎悪しか生まれません。日本以外の国は人災のほうが多いと思います。
 
日本人独自の挨拶、「お互いさま」や「おかげさまで」というのは、天災が多い国であることも理由だと思います。


■編集長・伊勢雅臣より

 ご指摘の点は、著者の大石氏も「災害死史観」と「紛争死史観」という対比をされています。日本は災害死が多いため、あきらめとともに受け入れますが、西洋や中国は戦争や犯罪による死が多いというものです。

 災害を契機に「協力、助け合い、感謝、恩返し」という善循環に入るか、戦争や犯罪による「怨念、憎悪」の悪循環に入るか、大きな違いですね。



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