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zoom RSS No.919 名著探訪(1): 祖国の自由独立のための『学問のすすめ』

<<   作成日時 : 2015/09/27 05:03   >>

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「人民独立の気概」を持った国民が、国家の自由独立を護る。

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(伊勢雅臣)本号は新シリーズ「名著探訪」の第1号です。我々の先人たちの心を育ててきた歴史的名著をご紹介します。本シリーズを通じて、本講座の読者が先人たちと心を通わせることができれば、と希望します。
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■1.「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」

 福沢諭吉の『学問のすすめ』は、出だしの「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」があまりにも有名で、人間の平等を謳った本と思い込んでいる向きも多いだろう。しかし、その先入観は、それに続く一文ですぐに打ち破られる。

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 しかし、この人間の世界を見わたしてみると、賢い人も愚かな人もいる。貧しい人も、金持ちもいる。また、社会的地位の高い人も、低い人もいる。こうした雲泥の差と呼ぶべき違いは、どうしてできるのだろうか。[1,62]
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 人間は平等だという建前とは別に、この世の中に貧富、貴賤、賢愚の違いがあるのは何故か、という問題提起なのである。諭吉はその理由をこう説明する。

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 その理由は非常にはっきりしている。『実語教』という本の中に、「人は学ばなければ、智はない。智のないものは愚かな人である」と書かれている。つまり、賢い人と愚かな人との違いは、学ぶか学ばないかによってできるものなのだ。[1,62]
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 ここまで読むと、『学問のすすめ』とは個人が賢く貴く豊かになるために学問が必要だと説いている、と即断する読者もいるだろうが、それもまた一面的な理解である。

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■2.学問の目的は「自由独立」

 諭吉は、学問をする目的を次のように説いている。

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 いま学問をする者は何を目的として学問をしているのだろう。

「何者にも束縛されない独立」という大義を求め、自由自主の権理を回復する、というのが目的だろう。

 さて「自由独立」というときには、その中にすでに義務の考え方が入っていなければいけない。独立とは、一軒の家に住んで、他人に衣食を頼らないというだけのことではない。それはただ「内での義務」というだけのことだ。なお一歩進んで、「外での義務」について考えなければならない。

これは、日本国にあって日本人の名をはずかしめず、国中の人と共に力をつくして、この日本国をして自由独立の地位を得させて、はじめて内外共に義務を果たしたと言えるのだ。[1,1291]
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「自由独立」とは、明治の日本人にとって抽象的な概念ではなく、現実の問題だった。幕末にアメリカの黒船による圧力のもとで開国させられた日本は、インドや東南アジア諸国のような完全な植民地となるか、中国のような半植民地状態に転落する危機を迎えていた。その危機を、諭吉は香港で目の当たりにした。

 幕府の外国方(今の外務省にあたる)で翻訳に従事していた諭吉は、ヨーロッパ行きの命令を受け、文久元(1861)年12月、イギリス差し回しの軍艦で品川を出発し、香港に着く。

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 いたるところイギリス船がいかりをおろし、その保護のために無数の軍艦が海上にあった。

 中国人の小商人が艦にやってきて諭吉らに靴を売りつけようとしていた。諭吉は一足買うつもりで値段の交渉を始めた。退屈まぎれにわざと手間取っていると、事情を知らないイギリス人がそれを見て飛んできた。

何か狡猾な小商人とでも思ったのか、その靴をサッと奪い取り、2ドルを諭吉に出させると、中国人に投げ与え、ものも言わずにステッキをふるって艦から追い出してしまった。中国人は価の当否も言わずただ恐縮して出て行った。

 これを見た諭吉は・・・慨然として国力の差を痛感し、世界の海を制圧しているイギリスの国威を羨むしかなかった。[a]
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 イギリスの商船・軍艦が港を埋め尽くし、中国商人は靴の売り買いまで英国人の言うがままになっていた。「天は人の上に人を造らず」どころか、イギリス人は中国人の上に君臨していたのである。

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■3.一国の自由独立とは

 諭吉は、一国の自由独立を次のように説いた。

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天理人道(天が定めた自由平等の原理)」にしたがって交わり、合理性があるならばアフリカの黒人奴隷の意見もきちんと聞き、道理のためにはイギリスやアメリカの軍艦を恐れることもない。

国がはずかしめられるときには、日本国中のみなが命を投げ出しても国の威厳を保とうとする。これが一国の自由独立ということなのだ。[1,122]
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「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と同様、「天は国の上に国を造らず、国の下に国を造らず」というのが、諭吉の考えた「天理人道」であった。しかし、現実世界はそうではない。中国人は、なぜイギリス人に奴隷のように扱われるようになったのか。

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中国人のように、自国よりほかに国がないように思い、外国人を見れば「夷狄夷狄(野蛮人め!)」と呼んで動物のように扱い、これを嫌い、自分の力も客観的に把握せずに、むやみに外国人を追い払おうとして、かえってその「夷狄」に苦しめられている[アヘン戦争など]という現実は、まったく国として身のほどを知らないところからきている。[1,126]
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 なぜ、中国はこんな愚かな真似をしたのか。

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世の中で学問のない国民ほど哀れで憎むべきものはない。知恵がないのが極まると恥を知らなくなる。自分の無知のゆえに貧乏になり、経済的に追い込まれたときに、自分の身を反省せずに金持ちをうらんだり、はなはだしくなると、集団で乱暴をするということもある。[1,160]
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 中国人は学問をしなかったために、貧乏に追い込まれ、外国人に乱暴をしかけて、アヘン戦争に負け、結局は奴隷のような有様に落ち込んでしまったのだ。


■4.実学を通じて個人の独立と国家の独立を

 しかし、中国には昔から儒学などの学問があったはずだ。諭吉の言う「学問」は、これとは違うものなのだろうか。

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 ここでいう学問というのは、ただ難しい字を知って、わかりにくい昔の文章を読み、また和歌を楽しみ、詩を作る、といったような世の中での実用性のない学問を言っているのではない。・・・

 むかしから漢学者に社会生活が上手なものは少なく、また和歌が上手くて、かつ商売が上手いという人はまれだ。・・・

 そうだとすれば、いま、こうした実用性のない学問はとりあえず後回しにし、一生懸命にやるべきは、普通の生活に役に立つ実学である。[1,83]
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 諭吉は、その「実学」として、読み書き・算盤から地理学、物理学、歴史学、経済学、修身学などを例に挙げる。清国は実学を無視し、儒学だけを修めた官僚が政治を行い、その結果、アヘン戦争に敗れて、半植民地状態になった。

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 こういった学問は、人間にとって当たり前の実学であり、身分の上下なく、皆が身につけるべきものである。この心得があったうえで、士農工商それぞれの自分の責務を尽くしていくというのが大事だ。そのようにしてこそ、それぞれの家業を営んで、個人的に独立し、家も独立し、国家も独立することができるだろう。[1,100]
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■5.「人民独立の気概」

 こうした実学は、現代日本では全国民が小中学校で義務教育を受け、過半数が大学に進んで専門教育を受けるという状況で、質はともかく、量的には十二分に実現されていると言える。

 しかし、それだけでは諭吉の説く『学問のすすめ』はまだ実現されているとは言えない。

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 国の文明は形のあるもので評価してはならない。学校とか、工業とか、陸軍とか、海軍とかいうのも、これらはすべて文明の形である。これらの形を作るのは難しくはない。金を出せば買えるのだから。

 ただ、ここに形のないものが一つある。

 これは、目で見えない、耳に聞こえない、売り買いもできない、貸し借りもできない。しかし、国民の間にまんべんなく存在して、その作用はたいへん強い。これがなければ、学校その他の形あるものも、実際の役には立たない。真に「文明の精神」と呼ぶべき最も偉大で、最も重要なものなのだ。

 では、そのものとは何なのだろうか? 「人民独立の気概」である。[1,634]
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 諭吉がこう語ったのは明治7(1874)年だが、この約20年後の日清戦争では、清国海軍がドイツに発注して作らせた当時の世界最大級、最新鋭の戦艦「定遠」「鎮遠」を日清戦争で日本海軍が打ち破った。

 日本を威圧するためのやってきた「定遠」の主砲の砲身に水兵が洗濯物を干していたので、それを見た日本の海軍将校が、巨艦といえども恐れるに足らず、と喝破したという。清国が金だけ出して作らせた最大最新鋭の軍艦も、「人民独立の気概」なきままでは、形だけに終わったのである。


■6.「お客さん」気分の国民では

 この「人民独立の気概」の重要性を説いた所は、『学問のすすめ』から現代の日本国民が学ぶべき点であろう。

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 仮にここに人口百万人の国があるとしよう。この内、千人は智者で、九十九万人以上は無知の民である。智者の能力や人格で、この民を支配する。[1,347]
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 智者が民を羊のように養う。民も従順に智者に従い、国は平穏に治まるが、

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・・・そもそもこの国の人民は、主人と客の二種類に分かれているのだ。千人の智者は主人となって好きなようにこの国を支配しており、その他の者は、全員、何も知らないお客さんなのだ。[1,348]
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 こんな国がいったん外国との戦争になったら、どうなるか。

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・・・「われわれはお客さんだからな。命まで捨てるのはさすがにやりすぎだよな」といって逃げてしまう者が多く出るだろう。そうなると、この国の人口は名目上は百万人と言っても、国を守るという段階では、その人数ははなはだ少なく、とても一国の独立など保てない。[1,348]
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 アヘン戦争で、世界の大帝国・清が「ケシ粒のような小国」と蔑んだ英国に負けたのも、ほとんどの国民が「お客さん」気分だったからである。[c]


■7.「人民独立の気概」をもって学問に取り組んでいるか?

 国民が学問に精を出したとしても、それが収入の良い仕事を得るだけのためで、「人民独立の気概」なしに国のことは政治家や官僚任せの「お客さん」気分では、国家を支える独立した国民とは言えない。

 国民一人ひとりが学問を通じて有為の人材となり、自分たちの力で国家を支えようという「人民独立の気概」を持ってこそ、初めて一国の自由独立が維持されるのである。

『学問のすすめ』は300万部も売れ、当時の3千万国民の10人に1人が読んだ勘定となる。明治日本が江戸時代とは打って変わって「人民独立の気概」に溢れた国になったのも、『学問のすすめ』による所大であろう。

 そして「人民独立の気概」を奮い起こした国民が、国家の自由独立のために、それぞれの分野で学問に励んだ結果、日清・日露戦争を勝って、国家の自由独立を護りえたのである。[b]

 一方、誰も『学問のすすめ』を説かなかった中国では、今も一握りの共産党幹部が十数億の「お客さん」を支配する専制政治が続いている。諭吉は「愚かな民の上には厳しい政府がある」という西洋のことわざを紹介しているが、まさにそれが現代中国の実態である。

 しかし、現代日本も、諭吉が『学問のすすめ』で説いた理想からはかえって遠ざかっている。諭吉が草葉の陰から現代の日本を見れば、「人民独立の気概」をもって、自らの学問に取り組んでいる国民はどれだけいるのか、と問いかけるだろう。
(文責:伊勢雅臣)


■リンク■

a. JOG(379) 文明開化の志士、福澤諭吉
 無数のイギリス軍艦が浮かぶ香港で、諭吉は何を考えたのか。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h17/jog379.html

b. JOG(236) 日本海海戦
 世界海戦史上にのこる大勝利は、明治日本の近代化努力の到達点だった。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h14/jog236.html

c. JOG(173) アヘン戦争〜林則徐はなぜ敗れたのか?
 世界の中心たる大清帝国が、「ケシ粒のような小国」と戦って負けるとは誰が予想したろう。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h13/jog173.html


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