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help RSS No.793 安全な国土を子孫に残そう

<<   作成日時 : 2013/04/07 04:15   >>

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 祖先から受け継いだこの美しい国土を、より安全にして、子孫に残すという事は我々の責務である。

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■1.連動する大地震

 日本のある地域で大地震があると、かならずと言って良いほど、他の地域でも20年程度の間に大地震を誘発しているというデータがある。[1,p52]

・東日本 貞観地震(M8.3以上) 869年
・関東圏 相模・武蔵地震(M7.4) 878年(9年後)
・西日本 仁和地震(M8.0以上) 887年(18年後)

・西日本 慶長大地震(M7.9以上) 1605年
・東日本 慶長三陸地震(M8.1) 1611年(6年後)
・関東圏 慶長江戸地震(M6.1) 1615年(10年後)

・関東圏 明治東京地震(M7.0) 1894年
・東日本 明治三陸地震(M8.2) 1896年(2年後)

・関東圏 関東大震災(M7.9) 1923年
・東日本 昭和三陸地震(M8.1) 1933年(10年後)
・西日本 昭和東南海地震(M8.0) 1944年(21年後)
・西日本 昭和南海地震(M8.0) 1946年(23年後)

 日本列島の下では、4つの大陸プレートが押し合い、へしあいして地震エネルギーをいろいろな箇所に蓄積しており、一カ所で大地震が起こると、それがプレート間のバランスを崩して、他の地域での大地震を誘発する、というメカニズムである。

 そう考えると、平成7(1995)年には西日本で阪神淡路大震災が起こり、16年後の平成23(2011)年には東日本大震災が起こった。次は東海、南海、東南海地方で大震災が起こっても、なんら不思議はない。今後30年以内に、そのいずれかが起こる確率は50%〜87%と言われている。[1,p174]

 阪神淡路大震災では死者・行方不明者が6千4百余人、被害総額10兆円規模、東日本大震災では1万8550人、16兆円〜25兆円。東海・南海・東南海を直撃する大震災となれば、直接被害だけでも40〜60兆円に達すると予想されている。東日本大震災の被災地復興とともに、他地域での防災、減災を急ぐ必要がある。


■2.「此処(ここ)より下に家を建てるな」

 藤井聡・京都大学教授の『列島強靱化論 日本復活5カ年計画』[1]では、来たるべき大震災から日本列島を「強靱化」するための8策を提案しているが、そのいくつかは東日本大震災で住民を守った事例に基づいている。本稿では、まずこれらの成功事例から見ていこう。

 岩手県宮古市の重茂半島東端の姉吉地域では、太平洋に張り出して、津波をまともに受ける地形にも関わらず、12世帯約40人のすべての家屋が被害を免れた。

 この村ではかつて、明治、昭和の二度の三陸大津波に襲われ、生存者がそれぞれ2人、4人という壊滅的な被害を受けた。

 その経験を踏まえ、昭和8(1933)年の昭和三陸大津波の後、海抜約60メートルの場所に「此処(ここ)より下に家を建てるな」という石碑を建て、以後、すべての村民が石碑より高い場所で暮らすようにした。

 今回の巨大地震発生後、港にいた住民たちはみな高台にある家をめざして駆け上がり、全員が助かった。震災後、自治会長のの木村民茂さん(65)は、「幼い頃から『石碑の教えを破るな』と言い聞かされてきた。先人の教訓のおかげで集落は生き残った」と語った。[1,p196]

 同様の例は原発にもある。東北電力女川原発は津波対策として、主要な建屋を海抜約15mに設置していたので、13mの津波に襲われても何の被害も受けなかった。当時想定されていた津波の高さは約3mだったが、同社の元副社長が強硬に海抜15m以上と主張したという。[2]

 この元副社長の脳裏には、昔からの地域の知恵が残っていたのではないか。


■3.「2度あることは3度あってはいかん」

 人工的な防災措置で、津波から無事だった村もある。岩手県・三陸海岸北部の普代村、人口約3千人の漁村には高さ15.5メートルの防潮堤と水門が作られていた。

画像


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 高台から見ていましたが、津波がものすごい勢いで港に押し寄せ、漁村や加工工場を一気にのみ込みました。バリバリという激しい音がして、防潮堤に激突。みな祈るように見ていましたが、波は1メートルほど乗り越えただけで、約1000世帯が住む集落までは来ませんでした。(普代村魚協・太田則彦氏)[1,p97]
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 港に船を見に行った男性が行方不明になったが、防潮堤の内側にいた人の被害はゼロ、住宅への被害も一切なかった。ちなみに隣の田野畑村では、高さ8メートルの防潮堤では津波を防げず、死者・行方不明者40人、全・半壊533戸の被害が出たという。

 普代村で15.5メートルもの堤防を造った経緯について、村役場住民課の三船雄三氏は、次のように語っている。

__________
 防潮堤は1970年に約6000万円(当時)をかけて造った。水門は35億円(同)で、84年に完成しました。普代村は1896年の明治三陸大津波で1010人の死者・行方不明者が出た。1933年の津波でも約600人が死傷しました。

戦後、和村幸徳(わむら・こうとく)村長が「2度あることは3度あってはいかん」と県にひたすらお願いし、建設の運びとなった。かなりの費用がかかるので、当時は「他のことに使えばいいのに」「ここまでの高さは必要なの?」といった批判もたくさん受けましたよ(苦笑)。

 きっと今は天国でホッとされているのではないでしょうか。[1,p98]
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■4.3千人近い小中学生が難を逃れた「釜石の奇跡」

 立地や防潮堤などハード面ではなく、防災教育というソフト面で大勢の人命を守った事例もある。岩手県釜石市の3千人近い小中学生のほとんど全員が津波の難を逃れた「釜石の奇跡」と呼ばれている事例である。

 明治三陸大津波では、当時、約6500人だった釜石町(当時)の人口のうち、実に約4千人もの命が失われた。それでも現代の地元は無防備で、地震があって津波の避難勧告が出ても、それに従う人はほとんどいない、という状況だった。

 そこで群馬大学大学院の片田敏孝教授は、学校での防災教育を十分にやれば、いずれその子供たちが親になって地域に根付いていくだろう、と考えた。その教育が実って、3月11日に大地震が襲うと、中学生たちは率先して、隣の校舎の小学生たちを連れて、避難所に向かった。

 小学生たちは校舎の三階に避難していたが、日頃から中学生たちと一緒に避難する訓練を重ねていたので、一斉に校舎を飛び出し、中学生について避難した。後にその校舎の3階には、津波に運ばれた車が突き刺さったほどだから、そのままそこにいたら、多くの犠牲者を出したろう。

 東北地方には「津波てんでこ」という言い伝えがある。津波が来たら、てんでんばらばらに逃げないと、家族や地域が全滅してしまう、という教訓だ。片田教授は、子供たちが親に「いざという時は、僕は必ず逃げるから、お父さんやお母さんも必ず逃げてね」と伝えるように教育していた。

 今回の震災で、釜石市全体では約1300人が亡くなったが、3千人の小中学生の親を調べてみると、亡くなったのは40人程度で、比率的にも非常に少なかった。これは「津波てんでこ」のような先祖の知恵が、防災教育を通じて、子供たちから親にも伝わった成果だろう。


■5.「天変地異という有事」に対しても「平和ぼけ」

 以上、紹介した三つの事例を日本全国で実践すれば、今後予想される大地震・津波の被害者数を一桁、二桁下げる、ということも夢ではない。

 これらの三つの事例で共通していることは、過去の津波で大きな被害を受けた後、次の津波では被害を減らそう、なくそうと、知恵を絞っていることだ。

 しかも、その対策として低地に家や原発を作らないとか、巨大な防潮堤を作る、など、目先の利益を犠牲にしても、いつ来るか分からない地震・津波から住民を守ろうとしている。

 しかし、こういう事ができたのは、ごく一部の限られた地域のみで、日本全体としては、これとは逆のことが行われてきた。

 たとえば、民主党政権で「コンクリートから人へ」というスローガンで、その前の麻生政権で立案されていた小中学校の耐震強化のための予算が1800億円も削減された。高速道路の耐震補強のための1211億円の予算執行も全額取りやめになっている。子ども手当や高校無料化などの票目当てのバラマキが、国民の安全を守る措置よりも優先されたのである。

 戦後の復興と高度成長を果たした約半世紀は我が国は長らく平和が続いたが、同時に「地震静穏期」にあたり、巨大地震がほとんど起こらない時期だった。藤井教授はこう指摘する。

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 つまり、戦後の日本人は、何も、「戦争という有事」に対してのみでなく、「天変地異という有事」に対してもまた、愚かしい「平和ぼけ」を、半世紀以上も続けてきたのである。[1,p176]
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 しかも、阪神淡路大震災で甚大な被害を出しながら、いまだに「平和ぼけ」から目覚めずに、耐震化工事の予算を削ってまでバラマキに努めたのでは、阪神・淡路の6千人以上もの死者・行方不明者も浮かばれないだろう。

 さらに東日本大震災で、それ以上の被害を出した現在、和村幸徳村長の言う通り「2度あることは3度あってはいかん」という常識が我々に求められている。


■6.デフレ・スパイラル脱却と防災投資

 藤井教授の『列島強靱化論』がユニークなのは、防災論に留まらず、防災投資がデフレ対策にもつながるという経済的主張である。

 現在の日本は需要と供給の差、すなわちデフレ・ギャップが30兆円程度あるという。これだけ物が売れないと、企業が倒産したり、人々の収入が減って、その結果、さらに需要が減り、デフレ・ギャップが拡大を続ける。この悪循環がデフレ・スパイラルである。

 1991年のバブル崩壊以降、我が国経済はこのデフレ・スパイラルに落ち込み、国民一人当たりの平均所得が100万円以上も落ち込んでしまった。同時に自殺者も一気に1万人以上も増加し、それが10年以上も続いている。つまりデフレ・スパイラルによって、10万人もの人々が命を失われているのだ。

 積極的な防災投資を行うことによって、将来の大災害を予防すると同時に、現下のデフレ・スパイラルからも脱却できる、というのが、藤井教授の主張である。


■7.子孫に安全な国土を残す

 問題は、どこにそんなお金があるのか、という点だろう。実は国内の銀行の「預金残高」から「貸出残高」を差し引いた預金超過額は、平成22(2010)年11月時点で151兆円に達している。

 つまり、国内の銀行は151兆円ものお金が余っていて、貸し付け先が見つからない状態なのだ。だから、その余っているお金を政府の防災投資のために役立てたらよい、といのが、藤井教授の主張である。

 手段としては国債を発行して、銀行に買って貰うという事になる。国債とは子孫に借金を残すということだが、それで集めたお金をバラマキで使ってしまったら、現世代の消費のツケを子孫に回るということで、倫理的に問題だ。

 しかし、今後、発生が予想される大地震や津波から子孫を守るために、現世代の余っているお金を借りて使うということは、十分、倫理的なことではないだろうか。子孫に借金は残るが、安全な国土という資産も残せるのである。

 しかも、それによってデフレ・スパイラルから脱却し、少しでも明るい日本経済を残せるとしたら、それも子孫のためになる。


■8.より美しく、より安全な国土を子孫に残そう

 藤井教授の考え方で共感するのは、防災には共同体意識が必要だという感覚が、著書のあちこちに窺える点である。

 たとえば、和村村長は苦労して巨大な防潮堤を作ったが、生きているうちにその効果を見ることはなかった。生前は「他のことに使えばいいのに」と多くの批判を受けた。

 また、姉吉地域で「此処(ここ)より下に家を建てるな」と言い伝えたのも、高台で暮らす不便を堪え忍んでも、子々孫々のために安全を確保したい、という先人たちの思いである。

 防災投資とは、現世代が自分のために使えるお金を、後の世代の安全のために使う、ということである。そこには自分たちの世代が我慢をしても、子孫のために尽くそうという無私の心がある。これが共同体意識である。

 耐震工事の予算を減らしてバラマキに使ってしまう、という民主党の政策は、まさに先祖に感謝し子孫のために尽くす、という共同体意識を忘れた戦後的発想の表れである。自分の世代のことしか考えない享楽主義では、百年の計が必要な防災対策はできない。

 祖先から受け継いだこの美しい国土を、より安全にして子孫に残すという事は我々の責務である。

(文責:伊勢雅臣)

■リンク■

a. JOG(050) 稲むらの火
 村民を津波から救った義挙
http://bit.ly/11CdNxQ


■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
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1. 藤井聡『列島強靱化論―日本復活5カ年計画』 ★★★、文春新書、H23
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4166608096/japanontheg01-22/

2. 夏目幸明「『原発の安全対策』最前線をゆく」、VOICE、H24.6


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