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zoom RSS No.774 興国のための国富論 〜 渡部昇一『日本興国論』を読む(2)

<<   作成日時 : 2012/11/18 06:03   >>

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 民主党の政策はバラマキと増税だけで、いかに国富を増やすか、という発想が決定的に欠けている。

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■1.「税と社会保障の一体改革」は「福祉の必要に応じて増税」

「税と社会保障の一体改革」をスローガンに、野田内閣は消費増税を決めたが、これは「福祉の必要に応じて増税しますよ」ということだと、現代の碩学・渡部昇一氏は新著『日本興国論』で喝破している。

 確かに「一体改革」と銘打っているのに、消費税だけ上げて、福祉の方はどういう改革がなされたのか。首相官邸のホームページには「社会保障・税一体改革ページ」まであって、野田首相の記者会見での次のような発言が掲示されている。

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社会保障費は毎年1兆円規模で膨らみ続けています。その社会保障を支えるためにだれかが負担をしなければなりません。・・・

今回、消費税の引き上げという形で国民の皆様に御負担をお願いいたしますが、その引き上げられた分は、増収分はすべて社会保障として国民の皆様に還元をされる。すべて社会保障として使われるということをお約束させていただきたいと思います。
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 ここには年金、保険、介護などの社会保障をどのように改革して、その増加を食い止めるか、という問題意識はまったくない。社会保障費は毎年1兆円増え続けるから、消費増税でまかなおう、というだけの発想である。

 渡部氏の指摘しているとおり、「税と社会保障の一体改革」の正体は「福祉の必要に応じて増税しますよ」という事なのである。


■2.なぜ、社会保障は際限もなく、増え続けるのか

「福祉の必要に応じて増税しますよ」という路線が行き着く先は、どのような社会なのか。

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 社会保障や福祉は成り行きに任せていれば、いくらでも膨らむものなのである。いま、わが国の年間税収は40兆円そこそこにもかかわらず、すでに医療費は34兆円に達している。しかも年に1兆円ずつ増えていく、と言われている。

大阪の生活保護受給者は18人に1人で、全国では3兆円にもなり、これまた限りなく増える傾向にあるという。[1,p37]
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 なぜ、社会保障や福祉は際限もなく、増え続けるのか。

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 そもそも社会保障や福祉は聞こえがいい。これに異を唱えたり反対するのはなかなか難しい。だから選挙では、ほとんどの候補者が票になりやすい社会保障の充実や福祉の推進を訴える。

国政の根幹の一つだが票にはなりにくい外交問題を表面に掲げる候補者はほとんどいない。私は選挙では社会保障や福祉の拡大を約束することはタブーにすべきだとさえ思っている。[1,p37]
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 民主党が政権をとった時のマニフェストを思い起こしてみよう。「国民の生活が第一。」と銘打って、以下のような大見出しが並ぶ。

・「中学卒業まで、1人あたり年31万2000円の『子ども手当』を支給します。高校は実質無償化し、大学は奨学金を大幅に拡充します。

・年金制度を一元化し、月額7万円の最低保障年金を実現します。
・農業の戸別所得補償制度を創設。高速道路の無料化。

 まさにバラマキのオンパレードである。財源としては、国の総予算207兆円でムダづかい、不要不急な事業を根絶することで、16.8兆円を生み出す、としていた。

 今頃、民主党は「財源捻出策に無理があった」「政権を取れば財源は何とかなるという甘い見通しがあった」と反省している[2]が、後の祭りである。

 これらの絵空事ばかりのバラマキ約束につられて民主党に投票した国民も少なくなかったであろう。自分の懐の金で票を買うことは法で禁じられているが、民主党がやった事は、国の金で票を買ったという事である。どちらがより悪質だろうか。

 福祉は票になる。逆に福祉の削減を訴える候補者は票を失う。これではよほど強力な政治指導者が登場しない限り、社会保障費が増え続けるのも当然である。


■3.イギリスが辿った衰亡への道

 このように際限なく増え続ける社会保障をそのままに、必要に応じて増税していったら、どうなるのか、その答えは、かつての英国が実証している。第2次大戦後、政権を握った労働党の掲げたスローガンが「揺りかごから墓場まで」であった。

__________
 なんと心地よく、聞こえのいい言葉だろう。そして、このスローガンは実践された。社会保障と福祉の拡大である。だか、その結果はどうだったろう。

資本とともに有能な者たちはアメリカに逃げ出し、イギリスの中心層だった中産階級は重税に疲弊した。そして、世界に冠たる繁栄を誇ったイギリスの国民一人当たりの所得が、かつて植民地だったシンガポールやヨーロッパの貧乏国と言われたスペイン以下になり、IMF(国際通貨基金)に緊急援助を要請しなければならない事態になったのである。・・・

 社会保障、福祉の膨らみ次第で税を増やすという、野田首相の唱える「税と社会保障の一体化」は、イギリスがたどった道への第一歩であることを知らねばならない。[1,p38]
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 国富を増やす算段もないまま、国富を作り出す人たちに重税を課し、それを弱者にばらまくだけでは、国家経済が衰亡していくのは、当然である。


■4. 医者に診てもらえない「福祉社会」

 平たく言えば、社会主義者の言う福祉とは、金持ちから富をとりあげて、貧しい人、弱い人に分け与えようということである。それ自体には人々の善意と正義感に訴えるものがある。しかし、そこに一つの罠がある。

 その一例として、渡部氏が引用しているのが、ハーバード大学の政治哲学者サンデル教授の質問である。

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 ・・・サンデル教授は中国に行ったことがあるらしく、病院で多くの患者が診療を受けようと並んでいるのを見た。そこに斡旋(あっせん)人が現れ、別にお金を出せば待たずにすぐに診てもらえる、と呼びかけたとする。これは認められるか。
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 教授の質問に、学生はイエスなら赤旗、ノーなら白旗をあげる仕組みで、学生の答えはほとんどがノーの白旗だった。

 渡部氏は、これによく似た経験をイギリスでしたという。氏は1958(昭和33)年にイギリスに留学した際に、日本の恩師から紹介された老夫婦を訪問した。一軒建ての家で、何の不自由もない暮らし向きだが、二人は何となく元気がない。聞けば、体調が悪いのだが、医者に診てもらうことができない、という。

__________
 これには驚いた。当時のイギリスは「揺りかごから墓場まで」を謳い文句にした福祉政策全盛の時代である。にもかかわらず、それなりに豊かな老夫婦が医者にかかれないとはどういうことだと思った。

福祉政策が推進され、多くの人が低料金での保険診療を受けられるようになった。すると、どの病院も患者が増え、受診するまで長時間待たされるようになった。病院から順番がきたとの指示が伝えられるのを何日も待っている、ということだった。

 長年真面目に働き、税金もきちんと納め、それなりの蓄えをして老後に備えたのに、肝心の老年になって医者にも満足にかかれないとは、と老夫婦は苦笑していた。[1,p45]
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■5.タクシーがあってはいけないのか

 別料金で待たずに診てもらえるサービスがなぜいけないのか。

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 わかりやすく言えば、交通手段としてバスの他にタクシーがあってもいいではないか、ということなのである(スターリンのソ連ではタクシー会社はなかった)。[1,p47]
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 社会主義における平等とは、タクシーを許さず、国民は全てバスに乗れ、ということだ。

 その裏で、共産党幹部などの権力者のみが、国費で高級車を乗り回す。権力者しか車に乗れない社会と、国民誰でもがお金を払えばタクシーに乗れる社会と、どちらが平等な社会だろうか。

 国富の観点から見ても、タクシー産業が生まれる事で、雇用機会が増え、そこからの税収もあがる。その税金を使って、公共バスをより安価、便利、快適にすることもできるだろう。

 平等を建前として、粗悪な画一的サービスしか提供し得ないソ連型の社会保障では、国民の各層が必要とする多様なサービスを効率よく提供し、それがまた国富を生み出す、という善循環は生み出せないのである。


■6.「人のため、コンクリートを」

 民主党が主張した「コンクリートから人へ」というスローガンも、国富論の基本を踏み外している。渡部氏はこの点を、八ッ場ダムを例にこう指摘する。

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 八ッ場ダムのそもそもの発想は終戦直後の昭和22年にさかのぼる。カスリーンと名づけられた台風が関東地方を襲って利根川水系が大氾濫(はんらん)、大きな被害をもたらしたのだ。この災害を繰り返さないためにも、はるか上流に八ッ場ダムをつくって関東地方の治水に役立てようということだったのである。[1,p52]
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 このカスリーン台風の被害は、死者・行方不明者は2千名近くに達し、住家損壊9千余棟、浸水38万棟以上、罹災者は40万人を超えたという。[3]

 首都圏への人口集中の進んだ現在であれば、その災害は三陸の津波以上の大変なものになるという土木関係学者の意見もあるという[1,p53]。首都機能が、東日本大震災並みの被害を受けたら、人命も国富も甚大な損害を受け、わが国は立ち直れなくなってしまう。

 渡部氏は「人のため、コンクリートを」と主張する。

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 防災に銭金を惜しむべきではない。土木事業を盛んにしなければならない。補修は絶えず続けなければならない。それが人々を、人々の安心な暮らしを守る、ということなのである。[1,p55]
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■7. 国力とは生産力

 欧州の経済危機が深刻である。その発端はギリシャの債務危機であった。

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 ギリシャはなぜ、国家が破綻しかねないような債務危機に陥ったのか。答えは簡単である。公務員を増やすような政策をとる政党が政権を握ったからである。

公務員は富を生まない。まあ、言ってみれば国家をよりよく運営するために富を消費するのが公務員の仕事である。・・・富を生産するよりも消費するほうにウエイトがかかった国家運営がなされたのだから、債務が増えるのは当然である。[1,p56]
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 欧州でギリシャの対極にあるのが、ドイツだ。

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 EU圏内でドイツだけはなぜダントツなのか、これもまた明快である。製造業が盛んだからである。生産力、モノをつくる力があるからである。EU圏内で債務に喘(あえ)ぐ国とドイツを見比べると、国力とは生産力、モノをつくる力なのだ、と思わないわけにはいかない。[1,p57]
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■8.いかに国富を生み出すか

 高学歴者のみが求められるITや金融に比べ、製造業はいろいろな職種、教育レベルの人々にバランスのとれた、かつ裾野の広い就業機会を与え、かつ製品の輸出を通じて効果的に国富を生み出す。

 日本の高度成長は製造業が牽引した。中国の経済発展も「世界の工場」になったからだ。アメリカも最近、製造業の回帰が始まると、活気づいてきた。製造業こそ国富を最も効率的に作り出すエンジンである。

 弊誌714号では「ハイテク製造業が国を救う」と題して、環境・省エネ、海洋開発、都市内交通・高速鉄道、高齢者向け医療機器・介護ロボットなど様々な分野で、わが国がハイテク製造業を興し、それによって国富を生み出せることを示した。[a]

「福祉の必要に応じて増税」というだけでは、国民の間で国富を右から左に移動させているだけで、国富は一向に増えない。いかに国富を増やすか、この発想が民主党の政策には決定的に欠けている。


 日本興国のためには、いかに国富を生み出すのか、を考えなければならない。

(文責:伊勢雅臣)

■リンク■

a. JOG( 714) ハイテク製造業が国を救う
 ハイテク製造業は、バランスのとれた雇用を創出し、外貨を稼ぎ、発展途上国を助ける。
http://blog.jog-net.jp/201109/article_2.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 渡部昇一『日本興国論』★★★、致知出版社、H24
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4884749766/japanontheg01-22/

2. MSN産経ニュース、H24.11.7、「民主党、マニフェスト謝罪 子ども手当や一体改革『見通し甘かった』
http://on-msn.com/101rwMC

3. Wikipedia「カスリーン台風」、http://bit.ly/T8tQ3a


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No.774 興国のための国富論 〜 渡部昇一『日本興国論』を読む(2) 国際派日本人養成講座/BIGLOBEウェブリブログ
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