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zoom RSS No.773 歴史教科書読み比べ(6) 〜 建国の物語

<<   作成日時 : 2012/11/11 05:28   >>

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 自国の建国の言われも語れないようでは、国際社会ではまっとうな教養ある人間とは見なされない。

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■1.建国の記述はわずか数行

 わが国の建国について、東京書籍版はこう述べている。

__________
 3世紀後半になると、奈良盆地を中心とする地域に強力な勢力(大和政権)が生まれ、前方後円墳をはじめとする大きな墓(古墳)がつくられるようになりました。大和政権は、王を中心に、近畿地方の有力な豪族によってつくられていました。

 大和政権の支配の広がりにともなって、前方後円墳などの古墳が、各地でも、その地の豪族をほうむるためにつくられるようになりました。[1,p25]
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 たったこれだけである。日本史の教科書とは、日本の国の歩みを教えるものであり、国家の誕生とは、その中でも特筆すべきトピックスであるはずだが、古墳という考古学的物証から言えることしか語っていない。

 国家が、どのような人々によって、どのような苦心の結果、創られたのかは、太古の昔からの重大関心事として語り継がれてきた事であり、それが古事記、日本書紀として残されているのだが、その内容は一切、無視されている。

 ちなみに古事記、日本書紀については、奈良時代の項で、次のように紹介されているのみである。

__________
 国際的な文化の交流がさかんになると、天皇が国を治めるいわれを確かめようとする動きが起こりました。神話や伝承・記録などをまとめた「古事記」と「日本書紀」、また地方の国ごとに、自然、産物、伝説などを記した「風土記」がつくられました。[1,p39]
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 ここでも古事記、日本書紀が成立した史実を述べるだけで、その具体的な中身については、何も紹介していない。これでは中学生が、歴史は「面白くない暗記物」と考えても当然であろう。


■2.神話の形で書かれた国の成り立ち

 東京書籍のこうした記述がどれほど面白くないものか、自由社版と比較すると一目瞭然である。

 自由社版でも古墳の全国的な普及から、大和朝廷が3世紀後半ごろに強大になったと説明するが、その後で、「8 神話が語る国の始まり」として、まるまる一章、4頁を割いて、古事記、日本書紀に書かれた神話・伝承を紹介している。その冒頭はこうだ。

__________
 日本の国の成り立ちは、8世紀に完成した日本で最も古い歴史書である『古事記』『日本書紀』に、神話の形で書かれている。神話や古い伝承は超自然的な物語をふくみ、ただちに歴史事実として扱うことはできない。

 しかし、これらの神話・伝承は、古代の人々が、自分たちの住む国土や自然、社会の成り立ちを、古くからの信仰なども取り入れながらまとめたものと考えられる。神々が織りなす物語は一貫したストーリーに構成され、大和朝廷の始まりにつながっている。[2,p42]
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■3.太陽神

 この章では、まず「イザナキ・イザナミとアマテラスの誕生」の節で、神々の系図をイラストで紹介した上で、こう結ぶ。

__________
 アマテラス大神は太陽を神格化した女神で、日本の最高神であり、皇室の先祖とされている。[2,p43]
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 朝日を拝むことは、我々の先祖がついこの間までやっていた事だ。ラフカディオ・ハーンは、明治23(1890)年に住んだ出雲の地で、日の出に向かって、そこここで柏手を打つ民衆の姿を美しく描いている。[a]

 太陽がすべての生命を支えているという科学的な事実を、我々の先祖は直感的に感得し、太陽を最高神として崇め、かつ国民の宗家たる皇室の先祖と考えたのである。

 そうした我が祖先の敬虔な心根に接すれば、中学生も登校途中で上り行く太陽をありがたいと思い、今日も頑張ろうという気持ちが湧いてくるだろう。

 自分たちの先祖の心根に共感する事から、その縦のつながりの中に自分たちが生かされていると感じとる。それが国民としての歴史感覚であり、それを学ぶのが歴史教育である、と弊誌は考える。

 余談だが、上海の駐在員から、現地で一番辛いことは、ひどい大気汚染のために、一年中、太陽が見られないことだ、と聞いたことがある。私自身も中国のどんよりした薄汚れた空気の中で数日でも過ごした後に帰国すると、さんさんと美しい太陽の光を浴びて、ほっとする。我々は、太古の昔から「日の本」の民なのである。


■4.「国譲り神話」に見る「話し合いでものごとを決める伝統」

 その次の節は「天孫降臨と神武天皇」で、アマテラス大神の孫のニニギの命が地上に降りる天孫降臨から、さらにそのひ孫にあたるイワレヒコの命が大和に入り、初代・神武天皇として即位するまでを簡潔に紹介している。

 このあと、さらに「国譲り神話と古代人」という2頁のコラムで、神話から当時の人々の考え方を読み取る好例を示している。

 この「国譲り神話」では、アマテラス大御神が高天原の神々と相談し、タケミカズチノカミ(健御雷神)を地上に派遣して、「この地上の国はアマテラスの子孫が治める国である。この国を譲りなさい」と要求した。

 オオクニヌシは、二人の息子の意見を聞いた上で、立派な神殿をつくって自分を祀ってくれれば、この国を献上すると答える。この神話に関して、自由社版は次のように解説している。

__________
 高天原の神々は合議によって使者の派遣を決め、オオクニヌシも息子の意見を聞いて去就を決めています。日本には話し合いでものごとを決める伝統があったのです。

 また、世界の他の地域なら、国土を奪い取る皆殺しの戦争になるところですが、「国譲り」の神話では、統治権の委譲が戦争ではなく話し合いで決着しています。[2,p44]
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 独断独裁を排し、話し合いを尊ぶ伝統は、さらに聖徳太子の憲法17条や、鎌倉時代の御成敗式目、明治時代の五箇条のご誓文などに引き継がれていく[c]。


■5.「大神(おおかみ)の奇(く)しき御業(みわざ)」

 出雲大社のホームページでは、大国主大神(オオクニヌシ)について、次のように解説している。[3]

__________
大国主大神は、「だいこくさま」と申して慕われている神さまです。だいこくさまは、「天の下造らしし大神」とも申しますように、私達の遠い遠い親達と喜びも悲しみも共にせられて、国土を開拓され、国づくり、村づくりに御苦心になり、農耕・漁業をすすめ、殖産の法をお教えになり、人々の生活の基礎を固めて下さいました。

また、医薬の道をお始めになって、今もなお人々の病苦をお救いになる等、慈愛ある御心を寄せて下さったのです。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 その国土の国譲りについては[4]、

__________
天照大御神は大国主大神の私心のない「国譲り」にいたく感激され、大国主大神のために天日隅宮(あめのひすみのみや)をおつくりになり、第二子である天穂日命を大国主大神に仕えさせられました。

この天日隅宮が今の出雲大社であり、天穂日命の子孫は代々「出雲國造」と称し、出雲大社宮司の職に就いています。現在は第八十四代出雲国造千家尊祐宮司がその神統と道統を受け継がれています。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 授業の中で、先生がこうした解説をすれば、このコラムで紹介されている皇后陛下の次の御歌も、実感をもって味わえるだろう。

国譲り祀(まつ)られましし大神(おおかみ)の奇(く)しき御業(みわざ)を偲(しの)びて止(や)まず

 オオクニヌシの希望通り、大和朝廷は巨大な神殿を作った。それが出雲大社である。現在の出雲大社は高さ24mであるが、最近、宮柱の根本が発見され、それによって48mもの高さの神殿を建てることができる事が判明した。現在のビルなら十数階に相当する高さで、その復元模型の写真も掲載されている。[5]

 平和的にオオクニヌシの領土を統合した過程から、当時の日本人の考え方が窺える。自由社版はこう結論づけている。

__________
 勝者は敗者に対して、その功績を認め、名誉を与え、魂を鎮める祭りを欠かさない。古代の日本人は、こうした政治の在り方を理想としていたのです。[2,p45]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

■6.神武天皇の足跡

 この後、地上に降り立ったニニギの命の子孫が、山の神や海の神の娘たちと結ばれ、それらの霊力が初代の神武天皇に継承されていく。

 神武天皇に関しては、日本サッカー協会のシンボルマークが、「神武天皇が道に迷ったときに導いた3本足の伝説上のカラス」であること、2月11日の建国記念の日が神武天皇の即位したとされる日付を太陽暦に換算したものであること、を紹介している。

 ちなみに、神武天皇は日向から大和の地に東征して、初代天皇として即位されたのだが、通過した各地で様々な言い伝えが残されている。[b]

 たとえば、その船団は宮崎市と延岡市の間にある美々津港から七つばえ島と一つ神島の間を通って出航したのだが、当地の漁師達は、ここを「御船出の瀬戸」と呼び、決して通らないようにしている。

 船団が明石海峡にさしかかると、波の流れが速いことから、「浪速国(なみはやのくに)」と呼ばれた。今日の大阪の難波(なんば)は、これがなまったものだと伝えられている。

 こうした言い伝えが、日向から大和に至る各地に残されている。中学生たちが郷里に残された神武天皇の足跡を調べてみれば、自分が太古からの歴史と連なっていることを実感できるであろう。


■7.神武天皇の理想

 こうしてたどり着いた大和の地で、神武天皇は都を創ろうとの詔を出された。その中には現代語にすれば、こういう一節がある。

__________
人々がみな幸せに仲良くくらせるようにつとめましょう。天地四方、八紘(あめのした)にすむものすべてが、一つ屋根(一宇)の下の大家族のように仲よくくらそうではないか。[6]
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 これが「八紘一宇」の理想である。戦後、この言葉から「日本が世界を征服しようとした」などと曲解・喧伝された。しかし、オオクニヌシの国譲りとも併せて考えれば、いろいろな部族が一つの国家にまとまって仲良く暮らしていこうという、きわめて平和的な理想である事が理解できよう。

 太古の日本は樺太・千島列島、朝鮮半島、南西諸島からいろいろな民族が渡ってきた「多民族国家」であったと考えられるが、平和的に一つの国家にまとまっていったのは、この理想が現実に生かされた結果であろう。大陸で様々な民族が血で血を洗う抗争を続け、次々といくつもの王朝が樹立されては倒されていった歴史とは著しい対照をなしている。

 また、先の大戦ではわが国はドイツと同盟を結んだが、そのユダヤ人排斥に対しては、この八紘一宇の理想から賛同せず、ユダヤ人を公正に扱うべしという「猶太(ユダヤ)人対策要綱」を国策として決定している。[d]

 この方針のもとで、シベリアからのユダヤ人難民2万人が救出されて満洲国に安住の地を与えられたり[e,f]、日本統治下の上海でも数万人規模のユダヤ人難民が安心して暮らしていた[d,g]。


■8.神話と現代のつながり

 神話を学ぶことは、このように我々の先祖の理想や価値観を知り、そこから我々自身が現代をどう生きるべきか、という事を考えさせてくれる。日本神話はそれだけ深く、豊かなのである。

 我々の先人がこのような神話を通じて理想や価値観を代々語り継いできたというのは事実である。神話は史実ではないから無視するという姿勢は歴史研究では許されようが、歴史教育ではなすべきことではない。歴史研究との混同が、今日の歴史教育を歪めている。

 東京書籍版で学んだ中学生は、「建国記念日」の言われさえ学ぶことができない。世界の常識から言えば、自国の「建国記念の日」の言われさえ知らないのでは、まっとうな教養を持つ人間とは見なされない。

 特に近代的国家で、その王室と建国が太古の神話時代にまで遡る国などは日本以外にはない。多くの教養ある外国人にとっては、それは非常に興味をそそるテーマなのである。

 東京書籍版では、豊かな精神遺産を先祖から与えられながら、それを知らない知的に貧相な国民を作り出すのみである。多くの中学生が、たまたまこういう歴史教科書をあてがわれて、そんなハンディを負わされるのは、罪作りな話ではある。

(文責:伊勢雅臣)

■リンク■

a. JOG(171) 「まがたま」の象徴するもの
 ヒスイやメノウなどに穴をあけて糸でつなげた「まがたま」に秘められた宗教的・政治的理想とは
http://www2s.biglobe.ne.jp/%257Enippon/jogbd_h13/jog171.html

b. JOG(074) 「おおみたから」と「一つ屋根」
 神話にこめられた建国の理想を読む。
http://www2s.biglobe.ne.jp/%257Enippon/jogbd_h11_1/jog074.html

c. JOG(082) 日本の民主主義は輸入品か?
 神話時代から、明治までにいたる衆議公論の伝統。
http://www2s.biglobe.ne.jp/%257Enippon/jogbd_h11_1/jog082.html

d. JOG(257) 大日本帝国のユダヤ難民救出 
 人種平等の精神を国是とする大日本帝国が、ユダヤ難民救出に立ち上がった。
http://www2s.biglobe.ne.jp/%257Enippon/jogbd_h14/jog257.html

e. JOG(085) 2万人のユダヤ人を救った樋口少将(上)
 人種平等を国是とする日本は、ナチスのユダヤ人迫害政策に同調しなかった。
http://www2s.biglobe.ne.jp/%257Enippon/jogbd_h11_1/jog085.html

f. JOG(086) 2万人のユダヤ人を救った樋口少将(下)
 救われたユダヤ人達は、恩返しに立ち上がった。
http://www2s.biglobe.ne.jp/%257Enippon/jogbd_h11_1/jog086.html

g. JOG(260) ユダヤ難民の守護者、犬塚大佐
 日本海軍が護る上海は1万8千人のユダヤ難民の「楽園」だった。http://www2s.biglobe.ne.jp/%257Enippon/jogbd_h14/jog260.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 五味文彦他『新編 新しい社会 歴史』、東京書籍、H17検定済み

2. 藤岡信勝『新しい歴史教科書―市販本 中学社会』★★★、自由社、H23
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4915237613/japanontheg01-22/

3. 出雲大社御案内、「出雲大社と大国主大神」
http://www.izumooyashiro.or.jp/kamigami/izumo/index.html

4. 出雲大社御案内、「国譲り- いづもおおやしろ事始め -」
http://www.izumooyashiro.or.jp/kamigami/izumo/index.html

5. 出雲大社本殿模型、島根県立古代出雲歴史博物館
http://www.izm.ed.jp/db/ranking.php

6. 出雲井晶『教科書が教えない神武天皇』★★★、産経新聞ニュースサービス、H11
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4594026338/japanontheg01-22/



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