国際派日本人養成講座

アクセスカウンタ

かっぱさんのBookmarkBar

zoom RSS No.690 デフレ克服に先人の知恵を

<<   作成日時 : 2011/03/13 05:41   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0


 デフレをもたらしている「生産年齢人口」の減少にどう対応するのか?


■1.「失われた20年」からの脱却方法は?

 平成2(1990)年のバブル崩壊から始まって、平成13(2001)年のITバブル崩壊、そして平成20(2008)年のリーマン・ショックと続く「失われた20年」に、日本経済は喘いでいる。

 現在20代の青年層は物心ついた頃からずっと不況が続き、しかも学校を出た途端に就職氷河期を迎えている訳で、人生これからという時期に、このような苦境に置かれている事を思うと、心が痛む。

 日本経済がなぜこのような長期低迷を続けているのか、それを「人口の波」という簡単明瞭な事実から明らかにした好著があらわれた。日本投資政策銀行参事の藻谷浩介氏の『デフレの正体』[1]である。

 今回は、この本をたよりに長期低迷からの脱却の道筋を考えてみたい。


■2.多くの商品の国内需要が減少傾向に

 藻谷氏は、多くの商品の国内需要が平成7(1995)年から平成12(2000)年にかけてピークを迎え、その後減少に転じているという事実を指摘している。

 国内の新車販売台数は平成12(2000)年をピークに下がりはじめている。「若者の車離れ」が原因とされているが、本当だろうか?

 百貨店の経営が不振だとは良く言われるが、スーパー、通販を含め国内小売り販売は、平成8(1996)年をピークに概ね減少傾向が続いている。ピークはバブル頂点の平成2(1990)年ではなく、その6年後である点に注意したい。

 国内の書籍・雑誌販売部数も平成9(1997)年をピークとして減少傾向にある。「インターネットが出版不況の原因だ」と言われるが、平成9(1997)年は弊誌がメールマガジンの草分けとして始まった年であり、書籍・雑誌の売上に影響を与えるほどには、インターネットは普及していなかった。

 その他にも、旅客輸送量(人数x距離)のピークが平成14(2002)年、酒類販売量も平成14(2002)年、タンパク質や脂肪の一人一日あたり摂取量は平成7(1995)−平成9(1997)年、さらには一人あたりの水道使用量も平成9(1997)年にピークを迎えている。

 車、小売り、書籍・雑誌、旅客輸送、酒、栄養、水と、なぜ揃いも揃って、同じような時期にピークを迎え、その後、低落傾向が続いている。その原因は何か。


■3.「団塊の世代」の足跡

 藻谷氏は、その原因をズバリ「団塊の世代」の定年退職にあると指摘する。

 戦争直後の昭和20(1945)年から25(1950)年にかけてベビーブームが起こり、この5年間に1100万人超が生まれた。その前後の5年間が900万人ほど、さらにその後の5年間は800万人程度なので、2〜3百万人も出生数あ多かった。

 昭和40(1965)−45(1970)年に、この団塊の世代が就職し始めると、日本経済は「いざなぎ景気」に突入する。5年間も続いた戦後最長の好景気により、日本経済は急速に成長し、世界第2位の経済大国となった。

 それまで親のスネをかじっていた青年が働き始め、自分の給料を得るようになれば、洋服を買ったり、外食を増やしたり、遊びに行ったりする。また郷里を離れて都会で就職すれば、部屋を借り、生活用品も一揃い買い揃える。このような生活需要が増えれば、企業の業績も上がり、給料も良くなることから、さらに生活需要が増えていく、という好循環が始まっていく。

 昭和40(1965)−45(1970)年に、この団塊の世代の1100万人が働き始め、同時期に退職した世代が400万人程度しかいなかったため、「生産年齢人口」は一気に700万人も増加した。

 昭和60(1985)年頃、この団塊の世代が30代後半となると盛んに住宅を買うようになる。なにしろ、この世代は平均4人兄弟で、かつ都会で就職しているケースが多いため、親の家を相続できない人が多い。そのために、貯金をして頭金を作り、ローンを組んで一戸建てやマンションを買うのが当たり前となった。

 これにより住宅市場・土地市場が空前の活況を呈した。多くの住宅・不動産業者はそれがいつまでも続くものと考えて、土地の買い占めなどに走り、これがバブルを呼んだ。しかし5年後、団塊の世代の住宅取得が一巡した平成2(1990)年頃、一挙にバブルが崩壊する。


■4.生産年齢人口の減少による需要減退

 平成12(2000)年には、昭和20(1945)年から25(1950)年に生まれた10百万人以上の「団塊の世代」が55歳−60歳となり、定年に入り始める。

 冒頭で、多くの商品の国内需要が平成7(1995)年から平成12(2000)年の間にピークを迎え、その後、減少傾向に入ったと述べたが、その原因が団塊の世代の定年入りである。

 定年後に新たに車を買ったり、買い換えたりという人は少ないだろう。またすでに家も持ち、衣服も、生活用品も揃っているから、住宅需要や小売り需要もあまりない。雑誌や本は、自由な時間があるから、図書館にいけばいくらでも読める。

 定年後は通勤も出張もしないから旅客輸送量(人数x距離)も減り、飲食の機会も、自身の酒量も減少する。さらには満員電車での通勤もなくなれば、当然、入浴の回数も減るだろう。

 こうして見ると、「団塊の世代」の定年により、多くの商品やサービスの需要が減退するのは、ごく当然のことだと分かる。

 一方で、同時期に就職する若い世代は、これらの商品・サービスの需要を支えてくれるはずだが、いかんせん、その人数が少ない。平成12(2000)年に20−24歳で就職を始める世代は800万人程度で、団塊の世代に比べ200万人ほども少ない。

「団塊の世代」の後は、5年単位で800万人規模が定年入りするが、生産年齢人口に加わる世代の人口は700万人台から600万人台、さらにそれ以下へと減少傾向が続く。すなわち、5年ごとに数百万人という規模での生産年齢人口の減少が続いていく。

 商品・サービスの需要自体が大きく減退していく一方で、その供給能力は生産性の向上や海外からの輸入も含めて増大傾向にある。

 デフレとは一般に商品・サービスの供給能力に対して需要が満たない場合に価格が下がり続けていくことを指すが、現在の「デフレの正体」は生産年齢人口の波による需要減退が主要因である、というのが、藻谷氏の明快な主張である。


■5.少子化傾向は覆せるか?

 デフレの正体が生産年齢人口の減少だとしたら、その対応策は何か。まずは少子化傾向そのものへの対応だろう。

 現在の出生率(女性が生涯に産む平均的な子供の数)1.3という数字は、「結婚した女性の希望する子供数は2.6人」というデータに比べると、その希望が適えられない状態になっているという意味で問題である。[a]

 希望が適えられない原因としては、養育費・学費などの経済的問題や、子供が生まれると女性は働きたくとも働けないという就業上の問題があるからだろう。

 そこで子供を産みたい女性が産めるような環境作り、そして子育てをしている家庭に対しての支援策が必要となる。たとえば2歳ぐらいまでは保育園よりも母親が直接育てた方がよいという考え方から、働く女性が2年程度の育児休暇をとれる制度や、育児経験豊かなお祖母さんたちが、家庭で子供の面倒を見てくれる「保育ママ」の制度などがある。[b]

 しかし、このような政策により出生率が一挙に2程度に回復しても、生産年齢人口の減少は続くと藻谷氏は指摘している。女性の数自体が減っているからである。

 団塊の世代では毎年200万人以上が生まれ、それ以降もしばらく150万人規模の出生数があったが、現在は毎年15歳超となる人口は110万人程度である。この年代で出生率が2程度に回復しても、生まれるのは同じく110万人程度であり、生産年齢人口の減少は続く。


■6.外国人労働者で問題は解決するか?

 国内で生まれる人口が少ないなら、手っ取り早く海外から労働力を輸入してはどうか、というのが、以前から主張されている外国人労働者受入論である。

 しかし、これも生産年齢人口の減少を補うには無理がある、と藻谷氏は指摘する。たとえば平成17(2005)−22(2010)年での生産年齢人口減少は毎年60万人。これを補おうとすると、毎年60万人の外国人労働者を受け入れなければならない。

 現在、日本在住の外国人は不法在留者を入れても230万人。過去10年間の増加は留学生を含め年6万人のペースである。

 したがって、これを10倍以上に増やさなければ、国内の生産年齢人口の減少はカバーできない。現在でも在日外国人の犯罪が問題となっているのに、その10倍ものペースで外国人が流入したら、どうなるのか。

 就職氷河期と言われるこの時期に、これほど大量の低賃金の外国人労働者を一挙に受け入れたら、職場を奪われるのは、我が国の青年たちであろう。

 また外国人労働者の問題で苦慮している欧米諸国からも学ぶべきだ。たとえばドイツは全人口の9%、750万人もの外国人を抱え、犯罪や教育などの問題から、3兆円以上の帰国補助政策をとったが、帰国した人数と同程度の不法入国があって失敗している。

 また、ごみ収集や建設工事などの「きつい、汚い、危険」いわゆる3K作業から脱出できない外国人労働者自身が希望のない生活を送っている。[c]


■7.「教育水準が高くて能力も高い日本人女性がいるのに」

 何も外国人労働者を家族と郷里から引き離して言葉も文化も違う日本に連れてこなくとも、国内で一気に生産労働人口を増加しうる手段がある事を、藻谷氏は指摘する。

__________
 私は、「外国人労働者導入は必然だ」と主張する議論を読むたびにいつも思うのです。あなたの目の前に、教育水準が高くて、就職経験が豊富で、能力も高い日本人女性がこれだけいるのに、どうして彼らを使おうとせずに、先に外国人を連れてこいという発想になるのか。

 日本女性が働くだけで、家計所得が増えて、税収が増えて、年金も安定する。そもそも女の人が自分で稼いでお金を持っていただいた方が、モノも売れるのです。車だって洋服だって日経新聞だって、働く女性が増えれば今以上に売れることは確実です。・・・

 しかもこれは、外国人労働者を導入するのと違って、全然追加的なコストがかからない話です。日本人の女の人は日本語をしゃべれるし、多くが高等教育を受けていますし、年金や医療福祉のシステムを今から新たに増強する必要もない。彼女らが働いて年金だの保険料だのをさらに多く払ってくれれば、なおのこといいわけです。元気に働く高齢の女性が増えれば医療福祉の支出も下がりますし、所得税収だって増えます。[1,p226]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 2010年版「男女共同参画白書」によれば、現在の日本女性の就労率は、他の先進国に比べても非常に低い。経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国で、高校以上の教育を受けた24〜64歳の女性の就業率は、ノルウェー(88.8%)、スウェーデン(88%)、英国(85.8%)を筆頭に、30ヶ国の平均が79.5%だが、日本は29位の66.1%と29位だった。[2]

 同白書は結婚や子育てに伴う退職を減らせば、最大で445万人の労働力増加につながるとの試算も提示している。


■8.デフレ克服に先人の知恵を

 しかし、女性の就労率が上がれば、出生率もさらに下がり、いずれはさらなる少子化と生産年齢人口の減少につながるのでは、と心配する向きもいるだろう。

 ところが県別のデータを見る限り話は逆で、島根、山形、福井、鳥取、岩手、富山、新潟、秋田など、女性の就労率が高い県は、出生率もまた平均以上に高くなっている。

 藻谷氏は、この理由として「女性が働くことで収入が増え、子供を育てる経済的余裕ができる」「仕事を持つことで、保育所の利用、親の手助けが得られ、子育てのストレスが緩和される」という点を上げている。

 そもそも高度成長期以前の我が国では、女性が働くのは当たり前だった。農家なら女性も農作業をしたし、商家でも女性が店の切り盛りをした。町人や武士の家でも内職をしていた。

 こうした伝統が忘れ去られたのは、「団塊の世代」が就職を始め、それを吸収するために、女性に結婚退職を勧めるようになったからだと、藻谷氏は指摘する。それなら、「団塊の世代」が退職し始めた今となっては、昔の姿に戻せば良いだけの話である。

 そもそも人生経験、子育て経験の豊かなおじいさん、おばあさんに子育てを手伝って貰い、働きたい女性が働けるようにする、というのは、それぞれに生き甲斐を得られる道であろう。三世代居住の多い地方が、女性の就労率も出生率も高い、というのは、今後の我が国のあるべき姿を示していると考えられる。

 現在のデフレから脱却するための処方箋は、こうした先人の知恵の中にすでに示されているのである。
(文責:伊勢雅臣)


■リンク■

a. JOG(431) 少子化と人口減を乗り越えよう
 少子化・人口減は幸せな国づくりへの好機。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h18/jog431.html

b. Wing(1516) 人口減少問題も愛国心で乗り越えよう
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h21/wing1516.html

c. JOG(143) 労働移民の悲劇
 ぼくたちには何のチャンスもありません。ドイツに夢を抱いていたことが間違いでした。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h12/jog143.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 藻谷浩介『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』★★、角川ONEテーマ21、H22
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4047102334/japanontheg01-22/

2. 日本経済新聞Web刊、H22.06.15、「高等教育受けた日本女性の就業率、30カ国中29位 10年版 男女共同参画白書」



デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
角川書店(角川グループパブリッシング)
藻谷 浩介
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文
No.690 デフレ克服に先人の知恵を 国際派日本人養成講座/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる